民間で働く会社員が病気、労災、産休時にセキュから支払われる手当金、IJSS ( Indemnités journalières de la la sécurité sociale)がどのように計算されているか知っていますか?
病気の時は月給の50%と聞いていたけど…でも、振り込まれた手当金はそれより少ないよ?
間違ってはいないのですが、月給の50%とはかなりアバウトな見立てです。実際にはそれよりも多くも少なくもなります。
以下の記事では、手当金がどのように計算されているのか、その計算方法について解説していきます。
病気で休職中にセキュから手当を受け取る
病気の際に受け取れるIJSSについて、その流れや前提条件等については以下の記事で詳しく書いています。
簡単におさらいすると、
- 病気、労災、産休等で会社を休む
- かかりつけ医が病気等による休職証明書を出す
- 証明書をCPAM(健康保険事務所)が受け取り、待期期間(3日)を経てCPAMが給料の一部を補償する
- 条件を満たせばCPAMの手当分を除いた給料の一部を会社側が補償する
という流れになります。
セキュの待期期間について
セキュには待期期間というものが設けられています。
セキュの待期期間は病気の場合は3日です。
つまり、セキュから休業手当が支払われるのは、休んでから4日目になります。
労災、仕事に関わる疾病、産休、育休には待期期間はありません。
病気の場合(Arrêt maladie)の計算方法
病気で休む際、セキュは病気になった月の前月から3ヶ月遡った給料を平均した金額の50%を補填します。1日当たりの手当金の計算方法は以下の通りです。
病気の月の前月3ヶ月の給料合計(Brut) / 91,25 x 50%
例えば2023年11月3日に病気になった場合、参照される給料は8月、9月、10月のそれです。
91,25とは3ヶ月の平均日数です。365日を12ヶ月で割り、3ヶ月でかけています。
この参照になる給料(Salaire de référence)は実際に受け取った、給料明細に記入されているBrutの金額です。
つまり、年度ボーナス、特別ボーナス、各種の手当を含めます。よって、前の月にボーナスをもらった、特別手当があった等の場合、セキュから支給されるIJSSの金額も上昇します。
基本給2000€、8月に夏季特別ボーナス1500€を受け取る。
11月3日に病気で1週間休んだ場合、支払われるIJSSは、8月、9月、10月の給料の平均。
(3500 + 2000 + 2000) / 91,25 x 50% = 41,09 € Brut
IJSSにかかるCSG/CRDS(税金)の6,7%をCPAMが天引きして納めるので、実際に受け取る1日あたりの額は、
41,09 – 6,7% = 38,34 € Net
セキュは病気の場合3日の待期期間の後、土曜、日曜を含むカレンダー通りに支払うので、1週間の場合は4日間に休業手当がでる。よって、実際に受け取る金額は、
38,34 € x 4 = 153,36 €
病気で休んでいた月はどうなるの?
もし、9月の給料が病気等でいつもより低かった場合はどうでしょうか?
その場合、本来もらうべきであった給料を再構築して、Salaire de référence とします。つまり、病気休養のため9月の給料が1500€と減額されても、基本給の2000€としてIJSSの計算式に組み込まれます。
ただし、これは病気を含む全てのArrêt de travailや理由のある遅刻や欠勤(Absence autorisée)に限られます。
理由のない欠勤(Absence non autorisée)の場合は参照となる給料は再構築されません。そのままのBrutの値がIJSSの計算の参考給料となります。
入社したばかりで3ヶ月働いていない場合はどうなるのか?
10月1日に入社した人が11月3日に病気になった場合、当然ながら新しい会社には参照とすべき3ヶ月の給料を出すことはできません。新しい会社は10月分の参考給料をCPAM(社会保険事務所)に提示するのみです。
この場合、CPAMはこの人が直近3ヶ月もしくは12ヶ月の間に別の場所で働いて社会保険料を納めていたかどうかを確認します。
もし納めていた場合は、CPAMは前の会社での給料を参照にして手当金の金額を決定します。
CDD等の短期契約を繰り返している、失業保険を受けていた等の場合、CPAMから直接連絡が来て、「〇〇の期間に社会保険料を納めていたことを証明する書類を送付してください」等、要求されることがあるので、その場合は求められた書類を送りましょう。
ダブルワークの場合はどうなるのか?
2つ以上の会社で働いていて、病気になった場合、それぞれの会社が過去3ヶ月に支払ったBrutをもとに手続きを行いますが、CPAMからの支払いは2つの会社の計算を合算したものになります。
雇用主補償を受け取れる場合(でもSubrogationは実施されない場合)は、それぞれの会社にCPAMの支払い証明書を送付することを忘れないようにしましょう。
Subrogation(立て替え)については以下の記事で詳しく説明しています。
労災(Accident du travail)、通勤災害(Accident de trajet)仕事上の疾病(Maladie professionnelle)の場合の計算方法
仕事中の事故、通勤中の事故、仕事による疾病に対するセキュの計算方法は病気の場合とは少し違います。
(前月1ヶ月の給料Brut + ボーナスがあればその12分の1) / 30,42
最初の28日まで上記の60%
29日以降は上記の79%
年度末ボーナスのような、1年の成果として支払われる性質のものは12分割してBrutのベースに足します。
病気の時と同様に、入社直後の事故、前月に病気で休んでいた、という場合は給料の再構成を行います。
セキュのサイトでは、29日以降の補償は80%と書かれています。しかし、実際に補償される金額は80%ではなく79%です。というのも、上限補償額というものがあり、その上限が実質的に各受給者のIJSSの79%に当たるからです。
産休(Congé de maternité)と育児休暇(Congé de paternité)の場合の計算方法
産休と育児休暇の計算方法は同じです。
産休と育児休暇はほぼ基本給の全額を補償されます(上限あり)。
産休、育児休暇中にもらえるIJSSのシュミレーションをセキュのサイトで行うことができます。
https://www.ameli.fr/cote-d-or/assure/simulateur-maternite-paternite
(前の月の3ヶ月分の給料Brutの合計 – 21%) / 91,25
-21%とは従業員側が負担するCotisatonsの合計です。産休、育児休暇の場合、参考となる給料はBrutではなくNetです。通常、従業員側が負担するCotisationsの率は会社や役職によって微妙に違うのですが、セキュでは全員に同じ率の21%を適用しています。
補償金額の上限
セキュからの補償金額には上限があります。2024年1月現在では以下の通りです。
病気の場合 | 52,28€ / 1日 |
産休、育休の場合 | 100,36€ / 1日 |
労災、仕事に関わる疾病の場合(最初の28日間) | 232,03€ / 1日 |
労災、仕事に関わる疾病の場合(29日目以降) | 309,37€ / 1日 |
先述のように、労災、仕事に関わる疾病の場合で29日目以降、80%のIJSS支給を受ける場合は、表の補償金額上限とは別に参考給料のNet=Brutから21%を引いた金額を超えてはならいという規定があり、実質的に支払われるのは79%です。
セキュの上限を超えた分は、Convention collectiveに従って、条件をクリアしていれば会社側が補填します。
まとめ
IJSSの計算方法について詳しくみてきました。
会社がSubrogation(肩代わり)のシステムを導入している場合、会社側がIJSSを見積り、肩代わりしてくれます。IJSSはCPAMから会社が直接受け取ります。
Subrogationを導入していない場合、給料明細上は、休んだ日の給料がマイナスになります。IJSSを受け取った後、支払い書を会社側に提出すると休業手当の会社負担分を振り込んでもらえます。
最近ではCPAMがArrêt du travail(休養証明書)をもらったにもかかわらず会社側が手続きを忘れていた場合、CPAMからSMSで被保険者に直接メールで連絡がいくようになっています。
休養中のIJSSの支払いは死活問題になるので、メールを受け取ったらなるべく早く会社のRHもしくは雇用主に連絡して手続きを進めてもらうようにしましょう。