前回の記事で、フランスの共済保険、ミュチュエル(Mutuelle)について解説しました。
今回は、その記事内で触れた、仕事を辞めた後も会社のミュチュエルに継続加入できる仕組みについて解説します。
Mutuelleの継続加入とは何か?
前回の記事で解説した通り、会社が提供する共済保険は最低でも50%の保険料を会社側が負担します。つまり、民間の会社員は通常の半額でミュチュエルに加入できます。
当然のことながら、会社を退職した場合、ミュチュエルの契約も自動的に終了となります。
ただし、一定の条件を満たしていた場合、
会社を退職後も会社のミュチュエルに、
保険料を一切負担することなく、
一定の期間、継続して加入することができます。
また、会社が社員をPrévoyancec(死亡、障害に対応する民間の生活保障保険)に加入させている場合、同じ条件でPrévoyanceも継続されます。
これをミチュエルのPortabilitéと呼びます。
継続加入できる条件
以下の条件を全て満たしている場合、ミュチュエルに継続して加入できます。
- 会社のミュチュエルに加入していた
- 重大かつ深刻な過失を理由にした解雇(Licenciement pour faut lourd)以外の理由で労働契約を終了している
- 失業手当を受ける権利がある
①会社のミュチュエルに加入していた
会社を辞める前に会社のミュチュエルに加入している必要があります。
会社を辞めてから会社のミュチュエルに加入することは当然のことながらできません。
また、ミュチュエルの契約に家族オプションを付けていた場合、つまり配偶者もしくは子供も同じミュチュエルに付帯していた場合、家族も継続的に加入できます。
②重大かつ深刻な過失を理由にした解雇(Licenciement pour faut lourd)以外の理由で労働契約を終了している
会社を辞める際のモチーフは様々です。例えばCDD契約の終了、解雇、辞職等々があります。
解雇の中でも、一番重い、重大かつ深刻な過失を理由にした解雇(Licenciement pour faut lourd)の場合はPortabilitéを受ける権利はありません。契約終了と同時にミュチュエルも終了します。
③失業保険を受ける権利がある
ミュチュエルへの継続加入は、失業手当の受給権利があるかどうかで決まります。
以下の記事に一覧表があるので、退職のモチーフによる失業手当の有無について確認してください。
自らの意思で退職するDémissionの場合は、重大かつ深刻な過失を理由にした解雇(Licenciement pour faut lourd)と同様にPortabilitéの権利は失われます。
手続き方法
上記の3つの条件を満たしている場合、労働契約終了の翌日からミュチュエルに継続して加入することができます。
会社側は加入している保険会社に労働契約の終了とその理由を伝達します。
従業員側は、失業手当の受給資格の証明書を保険会社に送付します。
双方の手続きが済めば完了です。
支払い
退職した従業員側の支払いは一切ありません。
在職時は会社側が最低でも50%、従業員側が残りの50%を払っていました。その従業員負担分も退職後は支払う必要はありません。100%無料です。
Mutuelleにいつまで加入できるのか?
ミュチュエルのPortabilitéは失業手当とリンクしています。
失業手当の受給資格があればミュチュエルのPortabilitéを受けることができますし、新しい職場を見つけて失業手当の受給が終了すれば、Portabilitéの権利も終了します。
一方で、ミュチュエルのPortabilitéの期間には上限があります。
MutuelleのPortabilitéの期間
Portabilitéの恩恵を受けられる期間は12ヶ月が限度です。
また、退職後にミュチュエルに継続して加入できる期間は、直前の労働契約期間と同等です。
例えば、5ヶ月間のCDD契約時にミュチュエルに加入していた場合、CDD契約終了後の5ヶ月間、ミュチュエルに無料で継続加入することができます。
同じ雇い主のところで、5ヶ月のCDDの後にさらに8ヶ月継続して働いた場合、合計で13ヶ月の労働期間となりますが、ミュチュエルは退職後12ヶ月をもって終了します。
MutuelleのPortabilitéが終わる時
ミュチュエルのPortabilitéは以下の状況でも自動的に終了します。
- 失業手当の給付が停止する(失業保険の期間の終了等々)
- 再就職
- 12ヶ月を過ぎる
MutuelleのPortabilitéが終了したあと
12ヶ月を過ぎてまだ再就職していない…といった場合、Portabilitéの権利が終了した後に加入していた保険会社からお知らせが届きます。
継続加入を希望する場合、6ヶ月以内に書類に記入して返送します。
ただし、この場合のミュチュエルの保険金は100%加入者個人の負担となります。また、家族を付帯したい場合も同様です。
なお、Portabilitéの権利が終了した後に継続加入できるのはミュチュエルだけで、Prévoyanceはその対象にはなりません。
まとめ
労働契約終了後のミュチュエルの継続加入、Portabilitéの仕組みについてみてきました。
まとめると、
- 失業手当を受給できる人が
- 辞める前に会社でミュチュエルに加入していた場合、
- 12ヶ月を上限に働いた期間と同等の期間、Portabilitéをうけることができる
ということになります。
失業後に慌てて個人のミチュエルに加入して高い保険料を支払うことはありません。ミチュエルのPortabilitéの期間がすぎてからで十分ですよ。