フランスのCDD契約について知ろう

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CDDとはContrat à Durée Déterminéeの略で、期限の定めのある労働契約のことです。

CDI(Contrat à Durée Indéterminée、いわゆる正社員)とは違い、契約終了日が契約書に明記されている点を除いて、全ての権利はCDIと同様に保障されています。

例えば、産休、育児休暇を取ることも可能ですし、病気の際に条件を満たしていれば雇用主から給料補償を受け取ることもできます。有給休暇も取得できます。

特別ボーナスや年末ボーナスに関しても同様です。CDDであることを理由にした差別的な扱いは禁止されています。

実のところ、CDD契約に際しては雇用主側が注意すべき規則は沢山あるのですが、労働者の立場に立つとCDIだからCDDだから、といった立場の違いはありません。CDD契約終了時のPrimeぐらいでしょうか。 

皆さんのなかには、CDD契約からフランスの仕事の一歩を踏み出す人も多いかと思います。CDDに焦点を当ててその仕組みについて少し詳しくみてみましょう。

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CDD契約の中身について

CDD契約は労働契約の期間に定めがあり、労働者はその先の生活が保障されていない、という点で不安定な立場に置かれます。

雇用主側がCDDの制度を悪用することを防ぐためにも、CDD契約は法律で厳しく枠図けられています。

契約期間

CDD契約の期間は1日から通常は最長で18カ月です。

契約期間は契約書に明示されなくてはなりません。

ただし、必ずしも契約終了日が明記されている必要はなく、例えばCDD契約の理由が社員の病気休暇の代替えの場合などは、「〇〇さんが病気休暇から戻るまで」といった記載になります。その場合、18ヶ月を超えない限りにおいて、当該社員の病欠が終わった時点で契約終了となります。

CDDの契約期間については求人、面接、契約書で確認しましょう。

契約の最長期間はその業務内容によって様々です。
通常は更新を含めて最長18か月ですが、例えばフランス本土外で業務を行う場合は最長24ヶ月、安全上の理由の緊急業務の場合は最長9カ月となっています。

契約のモチーフ

CDD契約には、契約を必要とする以下のいずれかの理由が契約書に明記されている必要があります。

  • 病気、休暇、その他の理由を含む一時的な社員の不在
  • 年末や夏季のバカンス期等、一時的な期間における業務内容の増大
  • 季節労働

契約のモチーフが不在の労働契約は、被雇用者の要請があればCDI契約とみなされます。

ポストと給料

CDD契約で雇われる人が担うポストがConvention collectiveで定められた賃金を下回ることはできません。

労働法が定める最低賃金(SMIC)とは別に、各事業所のConvention collectiveにおける最低賃金というものがあります。

例えば、ホテル、カフェ、レストランのConvention collectiveでは以下のように各ヒエラルキーの最低賃金が定められています。

つまり、Echelon 1, Niveau 2の役職で契約を結ぶ場合、最低賃金の12€を下回ることはできません。

Période d’essai(試用期間)について

通常、契約書のなかにはPériode d’essai(試用期間)の一文が挿入されます。試用期間中は、労使双方、自由に契約を打ち切ることができます。

試用期間はCDD契約の場合Convention collectiveに特別の定めがない限り、以下の通りです。

契約期間が6ヶ月以下の場合…
1週間ごとに1日の試用期間、最高で2週間まで。
例)1月8日から2月29日までの契約=合計で7週間と4日=試用期間は1月8日から14日までの7日間
契約期間が6ヶ月以上の場合…
1ヶ月の試用期間

一方で、試用期間中に契約を打ち切る際には、労使双方ともDélai de prévenance(告知期間)を遵守する必要があります。

つまり、試用期間中に自由に契約を打ち切れるからといって、「明日から来ません」「明日から来なくていいよ」とは言えない、ということです。

告知期間は契約上の労働日数ではなく、労働契約初日から数えて何日在籍していたかで変化します

CDDの場合は、労働契約期間に関わらず1ヶ月の試用期間を超えないので、告知期間は労使共に同様の日数です。

8日以下の在籍…
24時間の告知期間
8日以上の在籍…
48時間の告知期間

Prime de précarité(不安定雇用手当)について

CDD契約を満了し、最終月のBulletin salaireに振り込まれるのが、Prime de précarité(不安定雇用手当)です。

これは、契約期間中に受け取った合計給料(Salaire de brut)に最終月の給料を足した10%です。

2023年10月30日から2024年1月28日まで勤務

10月から12月に受け取ったBrutの合計は3607,12€

1月の基本給は1595,93€

よって、Prime de précaritéは

( 3607,12€ + 1595,93€ ) x 10 % = 520,31 €

また、最終月には使わなかった有給休暇(Congés payés)の清算も行われます。

有給休暇の計算は、6ヶ月を超えない場合、Prime de précaritéの計算と同様に期間中に受け取った合計給料+Prime de précaritéの金額の10%です。

有給休暇はたとえ1日だけの勤務だとしても振り込まれます。

Prime de précaritéが受け取れない場合

CDD契約でも、以下の場合はPrime de précaritéは含まれません

  • 季節労働(ブドウ狩の仕事など)
  • 学生が学期休み中に行うCDD契約(学期休み外の場合はPrime de précaritéが支払われる)
  • CDD契約中に同じ雇用主からCDIのポストの打診を受け入れた場合

また、Prime de précaritéを受け取ることができない状況もあります

  • CDIのポストへの打診を断った場合
  • 契約の最終日を待たずに途中で辞めた場合

CDIのポストへの打診を受け入れても断っても、Prime de précaritéが支払われないことに疑問をもつかもしれませんが、これはPrime de précaritéの性質を考えると納得できると思います。
Prime de précaritéはCDDという不安定な雇用に対する補償であり、CDIのポストを受けた場合はその必要性がなくなります。CDIのポストを断った場合は、あえて自らCDDという立場を選択したとみなされ、Primeが削除されるのです。

CDDの仕事を途中で辞めることはできるのか?

CDIにはDémission(退職)がありますが、CDDは契約終了日を前に自ら辞めることはできません。唯一の例外は、他にCDIのポストを見つけた場合です。

試用期間が過ぎたのちにCDDのポストを離れたい場合は、雇い主に相談して、両者の合意のもと、Rupture du contrat(契約の中断)を行うことができます。

現実には、雇い主に相談することなく、突然に仕事に来なくなる人がいます。雇い主側から損害を請求されることもあるので、事情があって契約終了日に職を離れる必要がある際には雇い主に相談し、必ず手続きに沿って辞めるようにしましょう。

労働者のほうからRupture du contratを申し出た場合、フランスの職業安定所であるFrance travail (旧Pôle emploi )から失業保険(Allocation chômage)を受け取ることはできないので注意しましょう。

契約最終日に受け取る書類

CDD契約が終了した後、雇い主側から受け取る書類は以下の3つです。

  • Certificat de travail(労働証明書)
  • Attestation de Pôle emploi(職業安定所への証明書)
  • Solde de tout compte(清算確認書)

3番目のSolde de tout compteは契約最後の給料の内容を記載した紙で、これをもってして全ての清算を終えたことを意味します。

Solde de tout compteは2枚渡されるので、通常は1枚にサインして雇用主側に渡し、1枚を自分で保管します。

もし雇い主側との間で相違がある場合や疑念がある場合(例えばPrime précaritéが支払われていない、一部の時間外労働が計算されていない等)、Solde de tout compteにサインをしてはいけません。サインして雇い主に返す義務はないので、自分で保管してください。

まとめ

CDDという契約形態は日本のアルバイトとは違い、自分の好きな時に働いて好きな時に辞める、ということはできません。

また、日本の契約社員とも違い、CDDの待遇は基本給からボーナス、手当を含めて、同じヒエラルキーのCDIと全く同様に扱われます。

求人広告をみていると、ディレクター等の上級管理職のCDD募集も目にします。

人によっては、あえてCDDという働き方を選択する人もいます。同じ待遇、業務内容にも関わらずCDDの場合ミッションの最後にPrime de précaritéがつくからです。

昔はCDDの仕事が終わったら、失業手当を数か月もらって、物価の安い海外で暮らして、また仕事に復帰して…を繰り返す人が沢山いましたが、数年前からこうした不正受給へのコントロールが厳しくなってきました。また、失業保険の給付率を減らすためにCDIへの転換を2回断ったら失業保険を給付しない等々、CDIへの就職を後押しする政策を強めています。

そうはいっても、自分のやりたい職種のポストが常にCDIを募集しているとは限らないですよね。

もし自分のキャリアに悩みがある場合、近くの職業安定所に訪れて、相談してみると有益なアドバイスをもらえると思います。

職業安定所では、相談にのってくれるキャリアアシストの担当員がいます。また、各種の研修、職業訓練も職業安定所からの金銭的援助で受けることもできます。

まだ行ったことのない人はぜひ一度訪れることをおすすめします。

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