フランスで仕事をしていると、
「うちは有給休暇はJour ouvréで数えるから」
「育児休暇の日数はJour calendaireだから気を付けてね」
等々言われて、
えっ…何ソレ…何が違うの…?
と困惑する時がありませんか?
フランスの労働現場では、様々な時間の数え方、日数の数え方があり、どの場面でどの方法で数えるか違ってきます。ちょっとめんどくさいです。
この記事では日常でよく使うJour calendaire, Jour ouvrable, そしてJour ouvréの3点に焦点を置いてみていきましょう。
Jour calendaire / カレンダー通りの数え方
Jour calendaireとはカレンダー通りに日付を数える方法です。
例えば、5月は31日にあります。そこで、Jour calendaire通りに数えると31日です。
同様に、6月は30日、7月は31日と数えます。
簡単ですね。
Jour calendaireはCPAM(社会保険機構)が支払う手当金を計算する時に使います。よって以下の理由に起因する休みの日数を計算する際には、多くの会社でCPAMと同じ計算方法を採用しています。
- 病気
- 労災、通勤災害、仕事上の疾病
- 産休
- 育児休暇
病気等の際に会社を休む際の、日数の数え方
Jour calendaireでは出勤日に関わりなく、1日として数えます。土曜、日曜、祝日、関係ありません。
例えば7月11日から7月20日まで病気で休んだ場合、土曜と日曜が元々会社の休みだったとしても、1日の病欠として勘定されます。なぜなら、CPAMがカレンダー通りに給料の補償を行うからです。会社側は、いわばCPAMに合わせているのです。
病気の場合、CPAMは3日の待期期間の後、7月14日から20日までの7日間、参考給料の50%分を補填します。(CPAMの計算方法については上記リンクを参考にしてください。)
給料明細では、以下のような記載になります。
病気に土曜、日曜は関係ないので、体調が悪く土曜日に診察を受けて、医者から休養証明書をもらった場合、例え会社が休みだとしても、土曜日が初日となります。日曜、祝日も同様です。
Jour ouvrable / 月曜から土曜日までの週6日の数え方
Jour ouvrableは日曜日と祝日を除いた、月曜から土曜までの週6日の数え方です。
Jour ouvrableについては、有給休暇の取得の際に耳にしたことがある人も多いと思います。
有給休暇の数え方にはあとで見るJour ouvréと2つの方法があり、どちらを採用するかは会社側の自由です。
ただし、原則的には、有給休暇はJour ouvrableで数えます。
Jour ouvrableでは、祝日でも会社が営業している場合、1日にカウントします。
有給休暇で会社を休む際の、日数の数え方(Jour ouvrableの場合)
有給休暇の取得をJour ouvrableに則って数えると、以下のようになります。
赤丸が勤務日=実際に会社を休む日で、黄色の線が有給休暇の日数です。
有給休暇を取得して実質会社を休んだ日が10日でも、12日として勘定され、12日分の有給休暇の消費となります。
なお、週3日などのパートタイムで働いている人が7月8日から19日まで休みを取った際には、フルタイムと同様に12日分の消費です。
有給休暇の計算には、勤務予定日から始まり実際に仕事に戻る前日まで通しで数えるという基本ルールがあります。よって、実際の勤務日かどうかは、有給休暇の日数を数える際には問題ではありません。例えば水曜と金曜の週2日で働いている人が7月10日から有給を取り、24日に職場に戻る場合、以下のように数えます。
有給休暇は勤務予定日である7月10日から始まり、勤務開始日の24日の前日、23日で終わります。よって、合計12日の消費です。7月19日までではないことに注意してください。
有給休暇の日数の仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
Jour ouvré / 月曜から金曜までの、週5日の数え方
Jour ouvréは土曜、日曜、祝日を除いた月曜から金曜日の週5日の数え方です。
より正確には、Jour ouvréは祝日を除いた営業日を指します。役所等の公的機関の手続きで5 jours ouvrésと書いてあったら、5営業日以内ということで、月曜日から金曜日を意味します。(通常、役所は土曜、日曜は休みなので)
Jour ouvréはConvention collectiveの定めに従い、会社の有給休暇取得の計算にも用いることができます。
Jour ouvrableだと1週間は月曜から土曜日の6日で固定されます。一方、レストランや小売業のお店では、土曜日が営業日で日曜、月曜を休日にしているところが多いです。その場合、Jour ouvréを使うと火曜日から土曜日の5日と設定することができます。
有給休暇で会社を休む際の、日数の数え方(Jour ouvréの場合)
Jour ouvrableの時と同様に、Jour ouvréの有給休暇の数え方について見ていきましょう。
赤丸が実際の勤務日で、黄色が有給休暇の数え方になります。会社の営業日を火曜から土曜日とします。
7月9日から20日まで有給休暇を取得した場合、合計で10日の欠勤=有給休暇の取得になります。
パートタイムで働いている場合、以下のようになります。
週3回、水曜、金曜、土曜日のみ働いている人が7月10日から20日まで有給休暇を取得した例です。
職場に戻るのは7月24日水曜日です。
Jour ouvrableでみた、有給休暇の計算は勤務予定日から始まり実際に仕事に戻る前日まで通しで数えるを原則とするルールに従い、実際に会社を休んだのは6日でも、有給休暇は10日の消費となることに注意してください。
有給休暇の計算に際して、Jour ouvrableが週6日と数えるのに対して、Jour ouvréは週5日で数えるので、Jour ouvréのほうが「お得」のように思えるかもしれませんが、実質的には同じことです。上記リンクの有給休暇の記事で詳しく解説していますが、毎月獲得する有給休暇の権利はJour ouvrableが1ヶ月2,5日、1年で30日であるのに対して、Jour ouvréは1ヶ月2,08日、1年で25日です。よってどちらの計算方法を採用していても、1年で5週間の有給休暇を獲得することに変わりはありません。
日数の数え方の原則
有給休暇の計算はJour ouvrableかJour ouvréのどちらかです。Jour calendaireが使われることはありません。
また、会社のConvention collective下では従業員全てが同じ計算方法に従います。
AさんはJour ouvrableだけど、BさんはJour ouvréで数える、ということはないです。
実際の勤務日と本社の営業日が違うとき
店舗は火曜日から土曜日の営業日でも、運営本社では月曜日から金曜日が営業日、というように拠点店舗によって勤務日が違うことがあります。Jour ouvréを採用している場合、本社に従って月曜から金曜日の週5日として数えるところが多いです。
そうすると、実際の休みと有給休暇の数え方にかなりの差が出ているようにみえます。ただ、実質的には同じことです。上の例でみた、パートタイムで水曜、金曜、土曜のみ働いている人が有給休暇を取った場合です。本社に合わせてJours ouvréは月曜から金曜の5日と仮定します。
有給休暇の取得は7月10日から23日までの10日として計算されます。Jour ouvréの項目で見た例と全く同じ勘定です。
スーパーの従業員は土曜日、日曜日も働きます。会社がJours ouvrableを採用している場合、以下のようになります。
水曜、金曜、土曜、日曜が勤務日で、7月10日から有給休暇を取得し、24日に職場に戻ってくる場合です。
有給休暇の取得は12日です。
Jour calendaireとJour ouvrable / ouvréが混ざるとき
Jour calendaireとJour ouvrableが混在する計算には注意が必要です。
Congé de paternité(育児休暇)の取得時がそうです。
子供が生まれたらすぐに、会社側から出産休暇が与えられます。労働法典では出産翌日から3日(Jour ouvrable)と定めています。
例えば、子供が金曜日に生まれたら、取得できる出産休暇は翌日の土曜日、月曜日、火曜日の3日です。
その後、CPAM(社会保険機構)から給料が補填されるCongé de paternitéを25日取ることができます。(子供一人の場合)
Congé de paternitéはJour calendaireで数えます。つまり、土曜、日曜を含めた毎日です。
例えば、子供が7月12日の金曜日に生まれて、3日の出産休暇の後に15日の育児休暇を取った場合、以下のようになります。黄色が出産休暇で、赤線が育児休暇になります。
この際、出産休暇を取得する社員の週休が土曜日、日曜日であったとしても、特別休暇が月曜から水曜の3日にずれることはありません。出産休暇の取得は「出産の翌日から3 jours ouvrables」と決まっているからです。
育児休暇については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
まとめると、以下のようになります。
Jour calendaire…土曜日、日曜日、祝日を含めたカレンダー通りに数える
Jour ouvrable…日曜と祝日を除く、月曜から土曜日までの6日
Jour ouvré…土曜、日曜、祝日を除く月曜から金曜日の5日
病欠や有給休暇の取得など、日ごろの会社員生活に関連性の高い話題を中心に見てきましたが、実際には契約関係、解雇、特別休暇、個人面接等々、様々な場面でこの3つの単語を目にすることになると思います。
特にJour ouvrableとJour ouvréは単語も似ているので、あれ、どっちがどっち?となりやすいです。(私もたまに頭が混乱してあれ?となります)。
分からなくなったら、RHに確認する前に、ぜひこの記事をもう一度読んでみてください。