Démission(辞職)とPréavis(事前通知)について~フランスで会社を辞めるとき

仕事を辞める
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フランスでは、新卒入社の会社を退職まで勤め上げる人は結構まれです(公務員、SNCF職員や銀行など好待遇のところはまた違いますが…)。

より好待遇、好条件を求めて、2社、3社と転職を重ねていきます。

フランスで働く皆さんも、転職の機会に何度か遭遇することがあるかもしれません。

日本と同様にフランスにも退職に際して踏むべきステップがあります。
今日辞職届をだして、明日から会社に行かない、というわけにはいきません。

この記事では、辞職届けを出してから実際に仕事を辞めるまでの流れについて見ていきます。

なお、試用期間中(Période d’essai)中に辞める場合は、こちらの記事を参照してください。

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DémissionできるのはCDIだけ!

まず、大前提として、自分の意思で仕事を辞めることができるのはCDI(無期雇用)契約の人のみです

CDD(有期雇用)の人は「辞職」できません
CDD雇用の人が自らの意思で契約終了日前に辞めたい場合は、Rupture(破棄)という方法を用いることになります。

Préavis(事前通知)とは?通知期間はどれくらい?

従業員側は辞職に際して、Préavis(事前通知)の遵守を求められます。

通知期間には決まりがあり、何カ月前までに通知を行うかは、各Convention collectiveに定められています。

通知期間はConventionによって様々なので一概には言えません。
一般的には、管理職のほうがPréavisの期間が長くなる傾向にあります。

例えば私立病院(Hospitalisation privée)のConventionでは以下のように定められています。

Employés(一般職員)の場合…
6ヶ月以下の在籍=15日の告知期間
6ヶ月以上の在籍=1ヶ月の告知期間
Techniciens ou agents de maitrise(技術職)の場合…

2年以下の在籍=1ヶ月の告知期間
2年以上の在籍=2ヶ月の告知期間
Cadres(管理職)の場合…

在籍期間に関わらず、3ヶ月の告知期間
Cadres supérieurs(上級管理職)の場合…
在籍期間に関わらず、6ヶ月の告知期間

事前告知の期間は人によりけり

事前告知期間は、Conventionによっても、その人の役職によっても様々です。

転職を考えている場合は、必ず自分のConvention collectiveを確認してから転職活動等を始めるようにしましょう。

というのも、会社面接の際に、必ず聞かれる質問が「Préavisの期間は?」です。
会社によっては、いま、すぐに働ける人を探していることがあります。そうした状況だと、1ヶ月も2ヶ月も、貴方のPréavisが終わるのを待ってはくれません。

「私の場合は1ヶ月だったよ」というまわりの友達や同僚の言うことを鵜呑みにしてはいけません。

唯一、Convention collectiveに書かれた期間だけがオフィシャルな回答です

以下のフランス政府のサイトでPréavisの期間を各Convention collectiveごとに検索することができます。
https://code.travail.gouv.fr/contribution/quelle-est-la-duree-du-preavis-en-cas-de-demission

Préavisの短縮、免除

Préavisは遵守しましょうとはいっても、もし雇用主がOKであれば、Préavisの免除(Dispense)を願い出ることもできます。この点は雇用主、上司との関係、貴方が抱える事情が理解を得られるか次第です。

辞職を急ぐ理由があれば、率直に話をして交渉してみましょう。実際に、Préavisの期間を免除されて1週間後に退職、という例は決して珍しくありません。というか、よくあります。

上記の例は退職者の側がDispenseを求める場合ですが、逆に雇用主のほうから「辞めるならすぐに辞めてくれ。明日から来ないでくれ」と言われることがあります。
その場合、雇用主側はPréavisの期間に応じた給料相応Indémnité compensatrice de préavisを支払う必要があります。

退職までの流れ

自身のPréavisの期間を確認したら、辞職届を提出して、最終日まで通常勤務を行います。

法律上は、口頭で辞職の意思を伝えるのみで十分ですが、言った言わないの対立を避けるためにも、必ず辞職届を準備しましょう。

辞職届は郵送の場合は配達証明書をつけるのを忘れずに。

手渡しの場合は、2部用意してお互いにその場でサインをするか、コピーを保存しておきます。

辞職届のモデルをフランス政府のサイトが用意しているので、これを活用してください。
https://www.service-public.fr/simulateur/calcul/Demission

辞職届を書く際の注意点

辞職届を書く際にひとつ注意点があります。

辞職届は、claire et non équivoqueである必要があります。すなわち、明確で曖昧ではない本人の意思による退職という選択が表明されている必要があるということです。

これはどういう意味でしょうか?

例えば、辞職届の中に「上司から○○という仕打ちを受けて、許せないから辞職します」や「仕事場で○○な出来事があったから辞めます」と辞職の理由を書く人がいます。

気持ちはわかりますが、この場合、法務部もしくは人事部は辞職届の受取を拒否します

というのも、文面から、退職が本人の意思ではなく、他者から強制された結果とみなされ、これを受理してしまうと、後々、辞職ではなく理由なき解雇として会社側に解雇手当の支払いが発生してしまうからです

Préavisの開始日はいつ?

Préavisの開始日は雇用主側がそれを受け取った日から始まります。

配達証明付きの郵便で送った場合

郵便局員が辞職届を手渡しで会社に届けます。その際、受取人は受領サインをします。その日がPréavisの開始日となります。

例えば…
配達証明郵便を5月2日に郵送、会社が5月6日に受け取る。
Préavisの期間が1ヶ月だとすると、5月6日から6月5日の夜までがPréavisの期間で、6月5日の夜をもって退職となる。

手渡しの場合

辞職届を渡し、その場でサインと受領日を記入してもらいます。その受領日がPréavisの開始日となります。

例えば…
5月2日に辞職届を手渡し。
Préavisの期間が1ヶ月だとすると、5月2日から6月1日の夜までがPréavisの期間で、6月1日の夜をもって退職となる。

Préavisの期間中に有給を消化してもいいのか?

Préavisの期間中に有給を取得できるかどうかは、辞職届を出した時期により3つに分類できます。

有給休暇の申請が許可された後に辞職届をだした場合

有給休暇を取得することができます。
ただし、有給休暇の間、Préavisの実行は停止されます

例えば…
5月13日から19日まで有給を申請して許可された後の5月2日に辞職届を手渡しした。
1ヶ月のPréavisの場合、6月1日の夜をもって退職となるが、6日間の有給取得分(Jour ouvrable)があるので、+6日で、最終日は6月7日の夜に後押しされる。

辞職届を提出した後に有給休暇を申請した場合

辞職届を出した後に、有給の申請を行い、それが許可された場合、Préavisの実行中に有給休暇を取得することができます

上記の例だと、6月1日が最終日となります。

なお、雇い主側が有給休暇の取得を従業員側に強制することはできません。

会社全体が年次休暇で閉まる場合

会社全体が年次休暇で閉まる場合、その期間はPréavisを実行しているとみなされます。

上記同様に、6月1日が最終日となります。

他にも、Préavis中にAccident du travaille(労災)やMaladie professionnelle(職業上の疾患)に見舞われ会社を休む際には、Préavisの実行が一時的に停止します。

Démissionの場合、失業保険は受給できるのか?

自分の意思で仕事を辞める場合、失業保険は受給できません

ただし、Démissionの理由によっては失業保険が出る場合もあります。

  • 結婚、PACSに伴って居住地が遠方になり、仕事を続けることが不可能になった
  • 配偶者の転勤による退職
  • 障害を抱える子供の施設入所に伴う住居変更
  • 配偶者からの暴力から身を守るための住居変更

詳しいリストは、France Travail(旧Pôle emploi)にあります。
https://www.francetravail.fr/candidat/mes-droits-aux-aides-et-allocati/a-chaque-situation-son-allocatio/quelle-est-ma-situation-professi/je-perds-ou-je-quitte-un-emploi/je-veux-demissionner-pour-un-mot.html

最後の給料明細

仕事の最終日もしくは翌日に決算を行ってくれるところもあれば、会社で決められた通常の給料日に決算されるところもあります。

最後の給料明細には、通常の給料の他に未消化の有給休暇が金銭で補償されます。(indemnité compensatrice de congés payés)

最終日には給料明細の他に、以下の3つの書類を受け取ります。

  • Certificat de travail(労働証明書)
  • Attestation de Pôle emploi(職業安定所への証明書)
  • Solde de tout compte(清算確認書)

詳しくは、以下の記事を参照してください。

まとめ

辞職の際に行う、Préavisについて詳しくみてきました。

Préavisは、会社側にとっては代わりの新しい人を探す猶予期間であり、従業員側は退職に向けた手続きや引き継ぎを行う期間でもあります。

たまに、辞職届を出した翌日から会社に来なくなり、無断欠席を続けたまま退職となる人もいますが、人事の評判は意外なところから広まるものです。

ちゃんとした手続きを踏んで、円満に会社を辞めるようにしましょう。

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