フランスのCongésと名の付く休暇をまとめた記事、第3回です。
第1回は出産、子育てに関わる休暇についてでした。
第2回は病気、介護に関わる休暇です。
最後となるこの記事では、ライフイベントの際に取得できるCongésの内容について見ていきましょう。
人生いろいろ、休みもいろいろ
Congé sans solde(無給休暇)を除いて、雇用主側が以下の休暇の申し出を拒否することはできません。休暇によっては休みの間の給料が全額保証されるものから、一部手当金がでる場合、全く無給の状態になるものなど様々です。
モチーフ | 休暇の日数 | 給料の補償の有無 |
Congés pour événements familiaux(イベント休暇) | Convention collective及びイベントの内容による | ○ |
Congé sabbatique(リフレッシュ休暇) | 6ヶ月以上11ヶ月以内 | X |
Congé pour création d’entreprise(起業休暇) | 1年 1回まで更新可(計2年) | X |
Congé sans solde(無給休暇) | 雇用主の合意 | X |
Congés pour événements familiaux / イベント休暇
結婚、出産、葬式など、人生に関わるイベント時には、勤務年数に関わりなく有給で休暇を取得することができます。休んだ日の給料はMaintien de salaire=給料維持で、雇い主側が支払います。
給料明細上は-+0です。
下の表は労働法典で定めている特別休暇とその日数です。
Convention collectiveによっては、より従業員に有利な場合があります。その場合は、Convention colletiveの内容が優先されます。
特別休暇 | 休暇の日数 |
結婚、PACS | 4日 |
子供の結婚 | 1日 |
出産、もしくは養子の受け入れ | 3日 |
子供の死亡 | 12日 |
子供の死亡(25歳以下) | 14日 |
配偶者、PACSの相手、もしくは同居人の死亡 | 3日 |
父、母の死亡 | 3日 |
義父、義母の死亡 | 3日 |
兄弟姉妹の死亡 | 3日 |
Convention collectiveによっては、引っ越しの際の特別休暇等もあります。
また、結婚式やお葬式が遠方で行われる場合、休暇の日数を+1日、+2日と延長してくれるConventionも存在します。
特別休暇の際には、一度自分が働く会社が属するConventionに目を通してみましょう。Conventionは以下のページから検索できます。
https://code.travail.gouv.fr/outils/convention-collective
Congé de deuil / 25歳以下の子供が亡くなった際の忌引き休暇
自分と血縁関係のある子供が亡くなった場合、子供の年齢によって12日から14日の特別休暇を取得できます。
- 子供が25歳以上の場合…
→ 12日の特別休暇
→ 血縁関係にある子供の母親、父親が取得できる - 子供が25歳以下の場合…
→ 14日の特別休暇
→ 血縁関係にある子供の母親、父親及び血縁関係にはないが子供が監護下にあった場合(交際相手の子供などを指す)
この休暇と独立してさらに取得できるのが、Congé de deuil (忌引き休暇)です。
この休暇は子供が25歳以下だった場合に限ります。
取得できる日数は8日です。
死亡日から1年以内であればいつでも取得できます。また2回(4日+4日)に分けて取得することもできます。
Congés pour événements familiauxを取得するための手続き
Congés pour événements familiaux を取得するためには、雇い主側に証明書を後日提出必要があります。
市役所が発行する婚姻証明書やお葬式の場合はActe de décès(死亡届)がそれにあたります。
結婚、葬式に参加するための休暇の取得は、その当日でなくても構いませんが、関連している必要があります。
例えば、お葬式、結婚式の当日はもちろん、前後2週間までなら常識的に許可されています。
結婚式から1ヶ月経った後に結婚休暇を取得するのは難色を示される場合があるので、雇用主及びRHに確認しましょう。
フランスの多様な家族構成だと、父、母、兄弟姉妹、子供の枠組みにどこまで含めるのか難しい時があります…Congés pour événements familiauxの取得が認められるのは基本的には、自身と血縁関係がある場合で、例えば再婚相手の連れ子の結婚式にCongés pour événements familiauxを申請することはできません。
Congé sabbatique / リフレッシュ休暇
Congé sabbatique、サバティカル休暇と日本でも呼ばれるこの休暇は仕事を離れて個人的な長期休暇を取得することです。休暇の目的、使途は自由です。
ただし、取得にさいしては条件があります。
Congé sabbatique取得の条件
Convention collectiveがより有利な場合を除いて以下の条件を満たしている必要があります。
- 同じ会社に36ヶ月以上在職している
- キャリア全体を通じて6年以上の勤務年数がある
- Congé sabbatiqueを取得する日から遡って過去6年で以下の休暇を取得していないこと
→6ヶ月以上のPTP(Projet de transition professionnelle)
→Congé création d’entreprise(起業休暇)
→Congé sabbatique
休暇を取得できる日数は6ヶ月以上、11ヶ月以下です。Convention collectiveでより長期のCongé sabbatiqueを認めている場合にはこの限りではありません。
会社側には休暇を取得する3ヶ月前に通知しましょう。
会社側からの給料の補償はありません。Congé sabbatiqueの間は無給状態となります。
Congé sabbatiqueの間、会社との労働契約は一時的に中断します。
競業避止義務等に違反しなければ、他の会社と労働契約を結んで仕事をしても問題ありません。
Congé pour création d’entreprise / 起業休暇
Congé pour création d’entrepriseとは自身で企業を目指す場合、会社や事業を引き継ぐ際に申請できる休暇です。
全面的(=労働契約の中断)もしくは短時間(Temps partiel=短時間勤務)で選ぶことができます。
取得できる条件は、同じ会社に24ヶ月以上在職していることです。
取得できる期間は、Convention collectiveに定めがない場合は1年が限度で、1回まで更新できます(合計2年)。
会社側には休暇を取得する2ヶ月前に通知します。その際に、起業目的について簡単に記載する必要があります。また、休暇の終わりに会社への復帰を希望する場合、そのまま退職を選ぶ場合のどちらにおいても、休暇の最終日より3ヶ月前に会社側へ通告する必要があります。
会社側からの給料の補償はありません。Congé pour création d’entrepriseの間は無給状態となります。
Congé pour création d’entrepriseの際に、その事業内容の成果を会社側に知らせる必要はあるのでしょうか?答えはNonです。実際のところ、Congé sabbatiqueと同様に、Congé pour création d’entrepriseの休暇の内容を問われることはありません。実際に起業したのか、成功したのかどうかについて会社側が問いただすことはありません。
Congé sans solde / 無給休暇
今まで見てきたCongésのなかで唯一、Congé sans soldeのみ法律の枠組みがありません。
よって、Congé sans soldeとは雇用主と従業員の間の話し合いで自由に決めることができる、無給休暇のことを指します。
これまでのCongésは、条件を満たしていた場合(もしくは条件に関わらず)、雇い主側に「Non」と拒否する権利はありませんでした。Congé sans soldeに限っては、雇用主側が望まない場合、拒否することができます。
雇用主側から従業員にCongé sans soldeの取得を強制される場合があります。
例えば、会社全体が年次休暇で1週間~2週間ほど閉まる場合などです。
入社間もなく、有給休暇が十分貯まっていない場合、当該社員には会社側はCongé sans soldeを用います。
Congé sans soldeに決まりはないので、雇い主側が了承すれば1日から1年、2年、3年…と取得することができます。もちろん、Congé sans soldeの間は無給です。給料は支払われません。
一方で、Convention collectiveによってはCongé sans soldeについて規定しているものもあります。その場合は、Convention collectiveの内容が優先されます。
Congé sabbatique, Congé pour création d’entreprise, Congé sans solde…違いは何?
Congé sabbatique、Congé pour création d’entreprise、Congé sans solde…この3つのCongésは以下の点で共通しています。
- 無給休暇=給料が支払われない
- 休暇中は労働契約が一時的に中断する
- 休暇の内容を問われない
- 休暇中に他社で仕事をしてもOK
Congé sabbatiqueは申請をするためのハードルが一番高いので(最低でも6年の勤務年数)、Congé pour création d’entrepriseを取得することもあれば、会社側に起業の事実を知られることを好まない場合はCongé sabbatiqueを取得します。
Congé sans soldeは勤務年数に関わらず1日から1週間と短期で取ることもできれば、1年から3年と長期の休も可能で一番自由度が高いです。ただし、取れるかどうかは雇用主次第となります。
まとめ
以上、3回にわたってCongésと名の付く休暇について見てきました。
繰り返しになりますが、Congé sans soldeを除いて、雇用主側はCongésの取得を拒否することはできません。また、Convention collectiveがより有利な場合、そちらが優先されます。
手続きに際しては、言った、言わないの争いを避けるためにも必ずレターを2部作成して休暇申請の開始日から終了日を記入して1部を会社に、1部を自分で保存することを忘れずに。
Congé sans soldeも含めて、休暇の取得を理由とした異動、降格、労働条件の変更等は認められません。
休暇を取得した社員は休暇前と同じポストに戻ることになります。