前回の投稿では、フルタイム労働の場合の残業手当の計算方法についてみてきました。
この記事では、Temps partiel(パートタイム)、すなわち週35時間以下で働いている場合の、残業手当の計算方法についてみていきます。
フルタイムとパートタイム、何が違う?
週35時間のフルタイムで働く人の残業をHeures supplémentairesと呼ぶのに対して、パートタイムの人が行う残業時間をHeures complémentairesと呼びます。
フルタイムの場合と違い、パートタイムの人はその契約書で決められた時間に基づき残業できる時間が決まります。またフルタイムの人は基本的には雇用主側からの残業指示を断ることはできませんが、パートタイムで働いている場合は状況によっては断ることができます。
パートタイムの残業時間の上限
パートタイム時の残業時間の上限は、契約書に記載されている労働契約時間の10分の1です。
例えば、週30時間であれば、残業時間の上限は3時間となります。
一方で、会社の事業内容によっては、Convention等の規則で労働契約時間の3分の1の残業時間が認められている場合もあります。その場合、週30時間であれば、10時間の残業が認められることになります。
パートタイムで働く場合、残業要請を断ることができる
基本的に、フルタイムと同様にパートタイムでも、雇用主もしくは上司に残業を要請されたら拒否することはできません。ただし、以下の状況下では、パートタイムに従事している人は残業要請を断ることができます。
- 直前に残業の指示を受け取った(3日前以降)
- 残業時間がその上限を超える(労働契約時間の10分の1)
- ダブルワークをしている場合
- 学生
Repos compensateur(代休)はナシ
フルタイム労働での残業はRepos compensateur(代休)として取得することができますが、パートタイムの場合、超過勤務分は必ず金銭で補償されます。雇用主側はRepos compensateur(代休)として残業時間を消化させることはできません。
Heures complémentairesの計算方法
Convention collectiveもしくは企業内協定でより有利な定めがない限り、残業代は以下の通りに計算されます。
契約書に記載されている労働契約時間の10分の1まで… 10%割増
10分の1以降… 25%割増
週17時間労働の場合、1,7時間の残業時間に10%、それ以降の残業時間には25%の割増手当が付きます。
SMIC(最低賃金)で働いてる人がある週に3時間の残業をした場合、支払われる残業代は、
11,65€ x 110% = 12,81 € x 1,7 h = 21,78 €
11,65€ x 125% = 14,56 € x 1,3 h = 18,93 €
合計で、40,71 €となります。
残業時間の数え方
残業時間の数え方は、Heures supplémentairesの場合と同様に、週単位で計算します。
また、有給休暇や病気で会社を休んだ場合、残業時間の計算の土台となる実際の労働時間には含まれないので、例えばある週に1日有給休暇を取得し、その翌日に3時間の残業をしたとしても、この3時間に割増手当はつきません。
つくのは、Heures complémentaires sans majoration(割増なしの残業代)と呼ばれる、超過分の時給のみです。
詳しい解説は、Heures supplémentairesの記事内にあるので、参考にしてください。
法定の残業時間を超えて働くとき~Avenant de complément d’heures
夏や冬のバカンス時、セール開催時、会社の繁忙期に労働時間を増やして働いて欲しい等の理由で、雇用主側から、Avenant de complément d’heuresを提案される時があります。
Avenant de complément d’heuresの契約を結んだ場合、例えば週17時間労働の人は、期間限定で週25時間、30時間働くことができるようになります。
Avenant de complément d’heuresを結ぶと、労働契約時間の10分の1もしくは3分の1の残業時間という規制が排除されます。ただし、
- Avenant de complément d’heuresを結べる回数は年間8回まで
- 労働時間の上限は週34時間まで。フルタイム労働(週35時間)と同じ労働時間働くことはできない。
Avenant de complément d’heuresは一時的な労働時間の拡大なので、この期間に働いた時間は残業代とはみなされず、割増手当はつきません。時給相当分の給料が上乗せされます。
まとめ
Heures complémentairesの計算方法についてみてきました。
なお、フルタイム労働時と同様に、年間労働時間制を採用している場合、残業代の計算はその年の12月31日が終了してから支払われることになります。
Avenantとは契約の修正、追加、補足を意味します。
皆さんが入社の際に結ぶ労働契約をContrat initialと呼びます。そのContrat initialの内容に修正が生じた場合(労働時間の変更、役職の変更、勤務先の移動など)、Avenantを結び、Contrat initialで規定されていた条項を修正もしくは追加します。
労働時間の一時的な増大のように、Avenantの内容が限定的なものである場合、その期間がAvenantに記載されています。一方で、契約の追加内容が例えば役職の変更のように継続的なものの場合は、AvenantはDéfénitifです。
Avenantに記載のある期限が過ぎたら、労働時間は元の契約のものに自動的に戻ります。