BrutからNetへ、何が引かれているのか?Cotisations(分担金)について知ろう②

給料明細の中身
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私たち、Gestionnaire de paieが毎月チェックする明細をBulletin détailléと呼び、従業員側と雇用主側の双方のCotisationsの全てが詳細に記載されています。

GPのコントロールが完了した後、その月の給料が口座に振り込まれ、給料明細が発行されます。

この、実際に皆さんの手元に届く給料明細をBulletin clarifiéと呼びます

Bulletin détailléの内容を簡略化し、できるだけ分かりやすくしたものです。2018年以降、雇用主側はこのBulletin clarifiéを発行することが義務付けられています。

政令で何をどう記載するのか決められているので、給料明細の体裁は違えど中身はどの会社でも大体同じです。

自分の給料明細がある人はそれを見ながら、もしくは下に載せた給料明細のサンプルを見返しながら解説を読むとより分かりやすいと思います。

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①②Complémentaire Incapacité Invalidité Décès

Prévoyanceと呼ばれる民間の生活保障保険のことで、病気、労災、通勤時の事故、障害、死亡時の給付金に対応しています。

Prévoyanceの加入は企業側にとっては義務ではないので、加入している場合としていな場合があります。ただし、以下の場合は加入が義務です

  1. 管理職
  2. 企業が従属するConvention collectiveで加入が義務付けられている場合

2の場合は、基本的には全社員加入です。

補償のレベルは障害・死亡時のみに加入している場合、病気から死亡まで全てのオプションに加入している場合と様々です。もちろん、全てのオプションに加入している場合、従業員と企業側の負担割合も高くなります。

負担率は保険会社との契約内容、従業員と会社の負担割合によって違います。会社側が全額負担してくれるところもあります。

Prévoyanceはどのように介入してくるのか?一例をあげてみます。
ある人が病気で長期間欠勤することになった場合、セキュから給料のおよそ50%にあたる補償を受け取ることができます。残りの50%(もしくはそれ以下)は条件が揃えば雇用主側が負担します。
ただし、雇用主負担には日数の上限があります。例えば90日が上限だとすると、それ以上病欠した場合、セキュからの手当、つまり給料の50%のみが月の収入になってしまいます。
そこでPrévoyanceに加入していれば、雇用主負担を超えた分をPrévoyanceが補償してくれるのです。つまり、従業員はセキュからの補償+保険会社からの給付金を受け取ることができます。

③Complémentaire santé

Complémentaire santéとは主に民間の補足的健康保険、Mutuelleのことを指します。

2016年以降、全ての民間の会社は従業員に対してMutuelleを提供することが義務づけられています

会社側は最低でも50%の保険料を負担し、残りは従業員側が負担します。

ただし、従業員側は以下の場合、会社が提供するMutuelleの加入を拒否することができます。

  • 配偶者、学生の場合は親のMutuelleに付帯している、または既に個人でMutuelleに加入している
  • 週15時間以下のパートタイム
  • 3ヶ月以下のCDD契約

Mutuelleはセキュから払い戻しされない医療関連費用をカバーしてくれます。会社員の場合、会社が費用の半分を負担してくれるので、大変にお得です。

もしMutuelleに加入していない場合は、必ず会社のものに加入しましょう。

なお会社側が負担するのは社員個人に係る基礎契約のみで、子供、配偶者を追加したい場合、もしくは払い戻し率の高いオプションに変更したい場合は、個別に追加契約を行い、追加保険料は給料明細を通さずに自分の口座から引き落とされます。

Sécurité Sociale

Sécurité Sociale plafonnée, Sécurité Sociale déplafonnée, Complémentaire Tranche 1の3つは年金制度に関わるものです。

フランスの年金制度は以下の3層構造でできています。

  1. 基礎制度 (le régime de retraite obligatoire de base)=公務員、民間企業、国鉄職員等の職種を問わず、フランスで働く全ての人に加入義務。フランス社会の年金システムの基礎。
  2. 補足制度 (le régime de retraite complémentaire obligatoire)=各職種カテゴリーによって運営組織が異なる。民間企業で働く全ての人はAGIRC-ARRCOに加入義務。国からの年金金額に上乗せする。
  3. 追加制度 (le régime supplémentaire)会社によっては強制加入。民間の保険会社との契約で、1と2に上乗せ補完する。

1の基礎年金保険料の支払いが給料明細のSécurité Sociale plafonnéeとSécurité Sociale déplafonnéeに対応し、2番目の補足制度への積み立てがComplémentaire Tranche 1 / Tranche 2にあたります。3の追加制度に強制加入している場合は、Complémentaire Tranche 1 / Tranche 2にまとめられます。

④⑤Sécurité Sociale plafonnée / déplafonnée

フランスの年金システムの土台部分です。フランスで働く全ての人に同じ負担率が適用されます

Sécurité Sociale plafonnée6,9 %
Sécurité Sociale déplafonnée0,4 %

Plafonnéとは天井のことで、給料明細においてはCotisationsがかかる上限金額を意味します。Déplafonnéは天井がない、つまり限度金額がないということです。Brutの金額がそのままCotisationsの対象になります。

2023年現在の上限は月に3666€、年間43992€です。

⑥⑦Complémentaire Tranche1 / Tranche2

土台の年金だけでは、退職後の生活を賄うことはできません。そのため、全ての民間会社で働く人は補足制度に加入し(強制)、保険料を上乗せし、将来にもらえる年金の金額を増やします。

Complémentaire Tranche1 はこの年金の補足制度にかかる以下のCotisationsの行をひとつにまとめたものです。詳しく見ていきましょう。

  • Retraite
  • CEG = Contribution d’Equilibre Général
  • CET = Contribution d’Equilibre Technique (Tranche2が存在する場合のみ )
  • APEC(管理職のみ)

Complémentaire にはTranche1とTranche2が存在します。Tranche1は上記のSécurité Sociale plafonnéeと同様に月に3666€、年間43992€の収入を限度とします(2023年現在)。この収入を超えた場合、Tranche2として新たにCotisationsがかかります。
CotisationsのPlafondは1月から12月の1年を通して計算されます。
つまり、その年の12月31日の給料が43992€以下の場合、Tranche1のみが、それ以上の場合、Tranche2がかかります。
しかし、年末に「貴方は1年間で43992€以上の収入があったから、Cotisationsを追加徴収します」と言われても困ってしまいます。
そこで、1カ月ごとにCotisationsの調整をすることになります。
例えば、1月にボーナスを含めて4000€の収入があった場合、3666€に対してTranche1が、334€に対してTranche2がかかります。
しかし、2月には通常の基本給2000€のみの収入だとすると、1月と2月の合計収入は6000€でPlafondの3666 x 2ヶ月 = 7332€を下回ることになります。
その場合、2月の給料明細で1月に取りすぎた分が払い戻されます。
こうして毎月、1年を通して漸次的にCotisationsの調整が行われているのです。
なお、パートタイム勤務、月の半ばでの中途入社、退社の場合はその割合に応じて再計算されます。

Retraite

年金の3層構造の2番目の補足制度と(人によっては)3番目の追加制度にあたる部分です。

民間企業で働いている場合、年金の補足制度はAgirc-Arrcoが担っています。定年退職後に私たちは基礎年金をCNAVという年金機構から、補足年金をAgirc-Arrcoから受け取ることになります。

Retraite Tranche13,15 %
Retraite Tranche28,64 %

3番目の追加制度に会社が加入している場合、その負担率が加わります。

CEG と CET

補足年金を管理する組織、Agirc-Arrcoは以前は2つの独立した組織でした。

Arrcoが民間で働くすべての会社員を、Agircは管理職のみを対象としていました。

この2つが融合して2019年に誕生したのがAgirc-Arrcoです。

CEGとCETはこの新しい組織の誕生に伴って登場したCotisationsです。補足制度内での均衡を維持するためのもので、CEGは全ての人に、CETはRetraiteのCotisationsがTranche2に係る場合にのみ登場します。

CEG Tranche10,86 %
CEG Tranche21,08 %
CET Tranche1 / Tranche20,14 %
APEC

APECはL’association pour l’emploi des cadresの略で、管理職団体のことです。管理職、みなし管理職にあたる人からのみCotisationsを徴収します

APECでは、管理職の就職支援、管理職にある人への研修制度の実施等を行っており、徴収されたCotisationsはその運営費用に充てられます。

APECは年金とは別のものなのですが、Agirc-Arrcoが負担金の徴収を行っているので、Complémentaireの行にまとめられています。

APEC Tranche1 et Tranche20,024 %

以上のRetraite / CEG / CET / APECを各Trancheにまとめたのが給料明細上のComplémentaire Tranche1 / Tranche2です。

⑧⑨CSG/CRDS

CSG/CRDSは今まで見てきたCotisationsとは性格が違います。これは税金です。

一方でCotisations的な側面もあります。全ての会社員が負担することで、社会保障システム全体の維持につながるからです。

CSG/CRDSは正確には以下のように呼びます。

  • CSG = contribution sociale généralisée(一般社会税)
  • CRDS = contribution au remboursement de la dette sociale(社会保障債務返済税)

CSGは主にフランス全体の社会保障費の補填のために、CRDSは社会保障に関わる借金返済のために使われます。

公務員、国鉄職員、民間企業の勤務等関係なく、フランスに税務上の居住地がある場合、すべての人に同じ税率が適用されます。

CSG déductible de l’impôt sur le revenu 6,8 %
CSG non déductible de l’impôt sur le revenu 2,4 %
CRDS non déductible de l’impôt sur le revenu 0,5 %
CSG/CRDSの計算方法

2023年現在、超高収入の場合を除いて、1,75%の割引が給料所得に対して行われます。

一方で、もし会社のMutuelleとPrévoyanceに加入している場合、その会社負担分の金額は非間接的収入として計算のベースに組み込まれます。

少し複雑なので、一番最初にあげた給料明細を基に実際に計算してみましょう。

MorinagaさんのCotisationsの対象となる収入は4955,80€です。

Morinagaさんは会社のMutuelleとPrévoyanceに加入しています。

CSG/CRDSがかかるBaseは以下のように計算できます。

4955,80 x 98,25% + ( 24,18 + 67,45 + 27,13) = 4987,83 €

この金額が、CSG/CRDSがかかるBaseになります。

給料明細に記載があるように、CSG/CRDSの一部は所得税が控除されます。CSG/CRDS déductible de l’impôt sur le revenuがそれです。

Morinagaさんの例だとCSG/CRDS non déductible de l’impôt sur le revenuの144,65€が所得税の計算に組み込まれます。

残業代は控除される

残業代とはHeures supplémentaires(151,67Hの場合)もしくはHeures complémentaires(パートタイムの場合)のことです。

この2つは年間7500€を上限に控除を受けられます。控除率は11,31 %です。

例えばMorinagaさんが2時間残業し81,69 €の残業代を得たとします。

給料明細では、この残業代を含めたCotisationsを計算した後、以下のように払い戻しされます。

Réduction de cotisations salariales 81,6911,31 %9,24

なお、税金であるCSG / CRDSは控除対象ではないので注意しましょう。

⑩dont évolution de la rémunération liée à la suppression des cotisations salariales chômage et maladieってなに?

皆さんの給料明細にも、Net à payerの下にこっそり小さな文字で以下の記載があると思います。

2018年の改革で、病気と失業保険料の従業員負担分が免除されました。その免除分の金額がまとめて記入されています。

上の行は、いわば成果アピールというか、「改革のおかげで以前より〇〇€収入が増えたんだよ」というお知らせです。(フランスの偉い人は給料明細に限らずこういう成果アピールの機会を欠かしませんね。)

給料明細自体には何も関わりがないので、無視してもいいです。

まとめ

というわけでフランスの給料明細の核であるCotisationsについて詳しくみてきました。

難しいような、簡単なような。

分かったような、分からないような。

といった感じですよね。皆さんは給料会計が仕事ではないので、わざわざ電卓片手に毎月Cotisationsの計算があっているかどうか確かめる必要はありません。計算自体は会計ソフト会社が最も力を入れて調整している箇所なので、間違えることはほぼない…はずです。

Cotisationsには行先と目的があるということが理解できれば、それまで不信感の塊だった給料明細が(なぜこんなに引かれているのか…何かの間違いではないか…とフランスで働く人が誰もが一度は思うこと)少し理性的なものに見えてくると思います。

なお、Net social, Net à payer等々、Netの詳しい記事については別にまとめたので、気になる人はそちらを読んでみてください。

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