フランスで初めての仕事!初めての給料!嬉しいなぁ!…ニャッッ!?
どうしたの~尻尾、膨らんでるよ~
少ない!契約書の金額よりもお給料がすごく少ないです!
あ~それは、Cotisationsが引かれてるからだよ~
Cotisationsって何ですか!?何が引かれてるんですか?
それはまぁ、イロイロだよ、イロイロ引かれるんだよ~
イロイロ?
そうそう、いろいろとね~
Cotisationsとは分担金、負担金という意味で、Brut(額面)から引かれる社会保険料、税金等を指します。フランスの給料明細の中でも特にナニコレと思う箇所かもしれません。
しかし、明細に書かれている内容が分からなくてフランス人の同僚に助けを求めても、あなたが納得できるように詳しく説明できる人はいないでしょう。大抵のフランス人もCotisationsについては「毎月一定金額引かれるもの」ぐらいの認識だと思います。
実際、Cotisationsの計算方法は大変に複雑です。だからこそ、私たちの仕事があるのですが…。
この記事では、Cotisationsの仕組み、大枠についてお話します。各Cotisationsの詳しい内容については②で説明します。
はじめに
フランスの社会保険制度は、私たち労働者と雇用主である使用者が相互に負担する保険料で運営されています。その運営組織は、それぞれの職域に応じて以下のように独立しています。
- 民間企業で働く人を対象にした一般制度
- 公務員、SNCF職員、パリ市民交通公社を対象にした公務員特別制度
- 弁護士などの自由業者を対象にした非被用者制度
- 農業従事者を対象にした農業制度
運営組織が違うと、Cotisationsの内容も変わってきます。
このサイトは民間企業で働く人のみを対象としているので、Cotisationsも一般制度についてのみの解説となります。
BrutからNetへの流れ
会計ソフトによって用語、記載方法に違いがありますが、皆さんの給料明細はほぼ以下のように構成されているはずです。
上段がSalaire brutのブロックで中段がCotisationsのブロック、最後のブロックがNetです。末尾には給料明細に関わる追加情報、有給休暇の取得・消化日数、時間外労働の時間数等々が記載されています。
給料明細の流れとしては、Salaire brutからCotisationsがひかれた金額がNet à payer avant impôt sur le revenuになります。
Net à payer avant impôt sur le revenuは所得税が引かれる前のNetの金額です。
所得税は2019年から源泉徴収されるようになりました。そのため、皆さんの給料明細には、Net à payer avant impôt sur le revenuの後にimpôt sur le revenueの1行が追加され、所得税率と所得税の金額が記載されています。
この源泉徴収の額を引いた、実際に銀行口座に振り込まれる金額が、Net à payerになります。
Cotisationsの対象になる、ならない?
基本的には、Salaire brutの金額=Cotisationsの対象金額です。
一方で、給料に含まれるがCotisationsの対象にはならないものがあります。
例えば病気の際に受け取るセキュからの手当金(雇用主が立て替える場合)、定期券の払い戻し、一定額までの食事負担(Ticket restaurant)、解雇手当金、会社の業績に応じた配当金などはCotisationsの対象にはなりません。
Cotisationsの対象にならない給料の一部は、Cotisationsの計算が終わった後にNet à payerに追加されます。明細の体裁としてはAutres éléments de paieのような一列が最後尾に、もしくは上段の給与の欄にBrut soumis à cotisationとは別に追加で記入されます。
Cotisationsの率はみんな一律?
転職した際、前の会社よりも全体のCotisationsの負担率が上がった下がった、という経験はありますか?
前の職場より少し給料が上がっているはずなのに、手取りがあまり変わらないとなるとCotisationsの計算がおかしいのでは…?と不安に思うかもしれません。
実はCotisationsの率は一律ではなく、所属先、役職、働く地域、職種によって変化します。
Cotisationsのカテゴリー
前提条件として、Cotisationsには3つのカテゴリーがあります。
- Légale(法的なもの)=民間企業で働く人々全てに同じ負担率
- Conventionnelle(協約的なもの)=業界内、会社内でそれぞれ違う負担率
- Facultative(補足的なもの)=雇用主側の決定により補足的に加入しているもの。例えば補足的な年金制度への上乗せなど。
例えば給料明細のSANTEの行にあるComplémentaire Incapacité Invalidité DécèsはPrévoyance complémentaireと呼ばれる民間の生活保障保険のことです。Complémentaire Santéは民間の補足的健康保険で、Mutuelleのことです。この二つはConventionnelleです。会社、業界によって負担率が違います。
会社のMutuelleは基本的に全ての従業員に加入義務があります。ただし、配偶者のMutuelleに加入している、短期の労働契約等の場合、加入が免除されます。
Prévoyanceは義務ではありません。ただし、管理職(Cadres)の人は強制的に加入されます。
Prévoyanceは全く加入していない場合もあれば、会社が社員分を負担している場合、会社と従業員の折半等様々です。
MutuelleにもPrévoyanceにも加入していない場合、以下の二行は人によっては存在しません。
上記の例では、この従業員はMutuelleとPrévoyanceに加入しており、その負担割合は会社側と半々ということが分かります。
管理職(Cadres)の場合
管理職(Cadres)、もしくはみなし管理職(Assimilé cadres)の場合、以下の2つが追加で徴収されます。
- Prévoyance complémentaire
- APEC
Prévoyance Complémentaireは先ほど説明した民間の生活保障保険です。病気、障害、出産等色々なオプションの中で、死亡オプションのみに加入義務があります。
APECはL’association pour l’emploi des cadresの略で、その名の通り管理職団体のことです。管理職の就職支援等を行っています。徴収されたCotisationsはAPEC運営資金の一部となります。
勤務地がAlsace-Moselleの場合
Alsace-Moselle(アルザスモゼール)地域の健康保険は他の地域とは異なる特別制度が実施されています。
Alsace-Moselle地域は1871年から1918年の間ドイツの支配下に置かれていました。フランスに返還後もこの地域の住民はフランスに比べて有利な条件のドイツの社会保障システムを維持し、第二次世界大戦後、フランスの健康保険制度が本格的にスタートした際にはその制度下に置かれることに反対しました。
こうした歴史的な事情を背景に、Alsace-Moselle地域で働く人の傷病手当金は支払い条件、支払い金額の両面において他の地域と比べてより有利なものになっています。
一方で地域独自の健康保険制度の維持のために、Alsace-Moselle地域で働く人(居住ではなく)には1,3%の健康保険料の負担があります。
給料明細には、通常SANTEのカテゴリーにSécurité sociale maladie Alsace Moselle1,3%の1行が追加されます。
特定の職種に就いている場合
特定の職種に就いている人は収入の一部を控除することができます。
これは、DFS (déduction spécifique pour frais professionnels)、と呼ばれ、主にジャーナリスト、音楽家、工事現場で働く人を対象としています。
控除対象となる職種のリストと割引率はURSSAFのリンク先を参照にしてください。
https://www.urssaf.fr/portail/home/taux-et-baremes/frais-professionnels/la-deduction-forfaitaire-specifi/middleColumn/la-deduction-forfaitaire-specifi.html.ajax
例えばジャーナリストの職業についている人は、取材のための移動費、機材の準備、取材用具の購入等、仕事をするための費用がかかります。
この取材に関わる費用を会社側が全て負担している場合は、控除の対象にはなりませんが、そうではない場合、30%の基礎控除が受けられます。(なお、2023年より控除要件が厳しくなりました)
一例として、ジャーナリストで月の基本給が3000€の場合、3000 – 30% = 2100€に対してのみCotisationsがかかります。
ただし、控除には上限が設けられており、2023年現在の控除上限は7600€です。
Cotisationsがかかる基礎給与が控除されると、もちろん手にするNetの金額が増えます。
ただし、収める年金の保険料も実際の収入に比べて低くなるので、定年後の年金の受取金額も減少します。また、ケガや病気、事故の際に健康保険から受け取る手当金も基礎控除された金額を基に算出されることは覚えておきましょう。
まとめ
冒頭にCotisationsについては、フランス人でも「毎月一定金額引かれるもの」ぐらいの認識でしかない、と書きましたが、あながちそれは間違いではなく、フランスで働く以上、健康保険・年金・税金が徴収されるのは避けられません。
「自分はめったに病気にかからないから補足の生活保障保険は必要ない」と思っても、会社側が加入している場合は強制的に加入されます。
Cotisationsに対してできることはあまりありません。
ただ、漠然と天引きされるのをみて「これって何?どこに払ってるの?」とモヤモヤするよりも、フランスの社会で働く自分が何を分担しているのか分かっていたほうがいいですよね。
Cotisationsを知ろう②では各Cotisationsの内容を解説しているので、興味のある人は読んでみてください。
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