「フランスではじめての仕事」シリーズは、フランスで初めてCDDもしくはCDIの仕事に就く人に向けた記事です。
過去の記事ですでに詳しく解説したものもありますが、このシリーズでは最初の仕事で疑問に思うであろう箇所を取り上げて、できるだけ簡単に分かりやすくまとめています。
今回は、労働契約書についてです。
プロローグ?として就職活動について書いた記事もあるので、まだ読んでいない人はぜひどうぞ。
フランスの労働契約書について
日本と同様に、フランスでも企業が従業員を雇用する際に契約書を作成します。
仕事の初日、もしくは前もって労働契約書が2部送られてくるので、1部を自宅に保管し、1部を会社側に提出します。
契約書には主に以下の内容が記載されています。
CDIの場合
意外かもしれませんが、CDIでフルタイム労働の場合、契約書を必要としません。口約束だけで成立します。(とはいっても、ほぼ全ての会社が契約書を用意しますが…)。
CDIでパートタイム勤務の場合は、契約書は必須です。
契約書自体に決まった体裁はなく、紙1枚のみや、ずらりと数十枚に及んだりと様々です。
契約書には主に以下の内容が記されています。
- 会社の所在地
- 従業員の名前、住所、生年月日、出生地
- 職務上の役職
- 勤務地
- 労働時間
- 給料、ボーナスの規定
- 有給休暇の日数
- 試用期間の日数
- 転勤の可能性がある場合は、その旨を記した条項(clause de mobilité)
- 競合他社への他社への転職を禁じる場合はその旨を記した条項(clause de non-concurrence)
CDDの場合
CDD契約の場合、契約書の内容はCDIのそれよりもより厳格です。
雇用主は労働初日から48時間以内に従業員に契約書を渡す必要があります。
契約書には必ずCDD契約を必要とする理由が明記されます。主に、
- 欠勤の社員の代わり
- 一時的な業務増加
の二つです。
CDD契約はCDIとは違い「一時的」な労働契約です。会社側のCDDの悪用を避けるために、契約書にのせる要項の規定は厳密です。もし、規定を守っていない契約書の場合、CDDはCDIへと認定され、契約終了時に違法な解雇として解雇手当等々を雇用者側は支払うことになります。
労働契約期間に注意
CDDの場合、契約期間と更新がある場合はその旨が契約書に必ず記載されています。
契約書の日付が、求人サイト及び面接時に提示された期間と齟齬がないか、確認しましょう。
CDD契約については、以下の記事に詳しく書いています。
試用期間(Période d’essai)について
Période d’essaiとは試用期間のことです。試用期間中は、労使双方が自由に契約を打ち切ることができます。
社員(Employé)、技術者 (Agent de maitrise / Technicien)、管理職(Cadre)で試用期間の長さが異なります。
Période d’essaiの期間は通常、契約書に明記されているので、必ず確認するようにしましょう。
試用期間を過ぎると、雇用主側はもちろんのこと、労働者側も、契約を終了させるために必要な手順を踏むことが求められます。
契約の改定、Avenantとは?
契約の主体となる契約書がContrat initialと呼ばれるのに対し、Avenant au contrat de travailもしくは単にAvenantと呼ばれるものは契約の改定を意味します。
Contrat initialで交わした内容の改定、更新、変更の際に新たなAvenantが締結されます。
例えば、労働時間、勤務地の変更、新しいポストへの変更とそれに伴う賃金の改定等々です。
また、CDD契約の場合、契約期間の延長やCDDからCDIへの契約の切り替え時にもAvenantが作られます。
Avenantの効力は契約書と同等です。
契約書に書かれていないことは守らなくてもいい!?
前の職場はスーパー等の小売業界だったので、職員の出入りが激しく、試用期間中に辞める人はもちろん、辞職、解雇等々もたくさんありました。
そしてよくあったのが、試用期間を過ぎて辞職する際に…
来週、彼氏の家に引っ越しします!それで、通勤が不便になるので、来週付けで仕事辞めます!
えっ…来週?いや、告知期間Préavisの1ヶ月は守ってもらわないと…
でも、契約書には告知期間について何も書いてないですから!いつ辞めてもいいですよね?
心の中で呟きました。「いやいや、そんなわけないでしょう」と。
冒頭で書いたように、契約書の体裁は自由です。すべての項目を事細かく10数ページに及び記載するところもあれば、紙一枚のところもあります。
紙一枚の場合、もちろん全てを記載することはできません。だからといって、記載されていないことは、拘束されないと考えるのは間違いです。
契約書に書かれていないことは、Convention collectiveに従います。通常は契約書のなかに適用されるConvention collectiveの名前が書かれているはずです。
例えば、試用期間を過ぎた後に仕事を辞める場合、社員(Employé)は1ヶ月の予告期間を設ける、等々細かいルールは契約書には書ききれません。
その場合、全ての事柄はConvention collectiveおよびAccord d’entreprsieの内容に従うことになります。
まとめ
特にCDD契約の人が注意したいのが、契約期間です。
日本のアルバイトとCDDは違います。CDDは契約社員に近いもので、特別な理由がない限り、契約期間を満了せずに自己都合で契約を中断することはできないので注意しましょう。
また、給料額についても注意が必要です。
通常、面接時に給料額について話合い、ポストを提示される際にもう一度給料額の合意があります。
契約書に書かれた金額やボーナスの条件が、両者の合意した内容と間違いがないか確認し、不明瞭な点は必ず採用担当者に確認しましょう。