フランスの年金について知ろう、第2回では年金は何歳から受け取れるのか?について解説していきます。
年金受給開始年齢について
何歳になったら年金を受け取ることができるのでしょうか?
フランスでは、大きく以下の3つのピリオドで区切ることができます。
- 64歳(1968年1月1日以降の生まれで172 trimestres=43年の基礎年金保険料を納めていた場合)
- 67歳(172 trimestres=43年の基礎年金保険料を納めていなかった場合)
- 70歳(雇用主が被雇用者に退職勧告をできる年齢)
64歳で定年退職する
2023年の改革により、フランスでの定年退職の年齢は64歳に引き上げられました。
1968年1月1日以降の生まれで172 trimestres=43年の基礎年金保険料を納めていた場合、64歳で年金を満額受け取ることができます。
64歳以降、172 trimestres=43年の基礎年金保険料を納めていなくても、定年退職をして年金を受給することができます。ただし、受給できる基礎年金額は大幅に減額されます。
一方、以下の状況では、早期に定年退職をして年金を受給することもできます(Retraite anticipée)。
- 16歳から21歳の早い時期に仕事を始めた人
- 障害のある人
- キャリアの途中で障害認定を受けた人
67歳で定年退職する
64歳の時点で172 trimestres=43年の基礎年金保険料を納めていなかったにもかかわらず定年退職を選択すると、もらえる年金の額はその不足分のTrimestres×1,25の係数を基に減額されます。
67歳以降に定年退職をすると、たとえ172 trimestres=43年に届いていなくても、減額率は無効となります。ただし、年金の支給額は納めたTrimestresに比例するので、注意しましょう。
もちろん、67歳以降も働き続けることができるので、引き続きTrimestres分の保険料を納めることができます。また、172 trimestres納めてた後でも働き続けた場合、年金支給額が上乗せになります。
70歳以降に定年退職する
会社側は67歳を過ぎた社員に定年退職を勧奨することができます。会社側からの呼びかけに応じて定年退職を選択することをMise à la retraiteと呼びます。ただし、強制力はありません。社員が了承しない限り、年齢を理由に追い出すことはできません。
一方で、社員が70歳を過ぎた場合、会社側は定年退職を勧告し、それを強制できます。
会社から退職勧告がなければ、継続して同じポストで仕事ができます。
年金保険料納付期間の数え方
1968年1月1日以降の生まれの人が基礎年金を満額受け取るためには、172 trimestresがValidés(認定)される必要があります。
1 trimestreは3ヶ月なので、172 trimestres=43年です。ただし、これはイコール労働期間ではありません。
どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
Trimestreの認定方法
1 trimestreを認定するためには、150 x その年の1月1日のSMIC(法定最低賃金)分の給料(Brut)に対する年金保険料を納めている必要があります。
2025年1月1日の時点でSMICは11,88€なので、2025年の4trimestresを取得するために必要な収入は以下の通りです。
150 x その年の1月1日のSMIC(11,88€) | |
1 trimestreを認定 | 1782 € |
2 trimestresを認定 | 3564 € |
3 trimestresを認定 | 5346 € |
4 trimestresを認定 | 7182 € |
例えば2025年にCDDの仕事で2ヶ月間働き、7182 €を超える収入を得た場合、労働期間が2ヶ月でも1年分の年金保険料を納めたとみなされ、4 trimestresが認定されます。
なお、収入に関わらず1年に認定することができるのは4trimestre(12ヶ月)のみです。
納付期間のみなし措置
上記のように、1年間に納めた年金保険料によってTrimestreが認定されることをTrimestres cotisésと呼びます。対して、Trimestres assimilésは保険料を実際には納めていないが、納めたものとしてみなされ、ValidéされるTrimestesのことです。
例えば、以下のような期間がみなし納付期間として扱われます。
- 失業期間
- 産前産後休業期間、育児休業期間
- 病欠期間
- 兵役期間
- スポーツで秀でた実績のある人に与えられるstatut de sportif de haut niveauでの活動期間
- 会社設立準備のための失業期間
- フランス国外での勤務期間
- 服役中の刑務所での勤務期間
日本での保険料納付期間をフランスで認定できるか?
日本で仕事をした後にフランスに移住した多くの日本人が思うであろう疑問、それは、

で、日本で保険料を納めていた期間はどうなるの?フランスのそれに合算できるの?
はい、できます。日仏社会保障協定の発効によって、日本で納めていた期間をTrimestres assimilésとしてフランスの年金加入期間に合算することができます。
ただし、将来受け取る年金額はフランスで納めていた保険料納付期間を基に計算されるます。また、みなし納付期間として扱われるのは基礎年金のみで補足年金への上乗せ等はありません。
以下、詳しく見ていきましょう。
日本での保険料納付期間をフランスへ合算する
フランスの年金について知ろう③で詳しく解説しますが、フランスの基礎年金額の計算方法は以下の通りです。
一番高い年収の25年の平均 x 50 % x ( 保険料納付期間 / 172 trimestres )
例えば年収の平均が30000 €で、172 trimestresの全てをフランスに納めていた場合、もらえる基礎年金の年額は…
30000 € x 50 % x ( 172 trimestres / 172 trimestres ) = 15000 €
15000 € / 12ヶ月で、月々1250 €が基礎年金として受給できます。
一方で、172 trimestresのうち、10年分、つまり40 trimestresは日本で納めていた期間だとすると、日仏社会保障協定によって年金の受給要件である172 trimestresに合算することができますが、受給金額はフランスに納めていた期間にProrata(比例分割)されます。
30000 € x 50 % x ( 132 trimestres / 172 trimestres ) = 11511,63 €
月々の基礎年金額は959,30 €となります。
足りない40 trimestresの分は日本の年金機構に手続きをして、日本での受給要件等をクリアした上で、日本で受け取ります。フランスが日本での年金を建て替えてくれるわけではないので注意しましょう。
なお、補足年金はポイント制で、フランスで働いた132trimestres分のみがポイントに換算されて、基礎年金に上乗せされます。
まとめ
年金受給開始の年齢についてみてきました。
1968年1月1日以降の生まれで、172 trimestesの年金保険料を納めた人は64歳で満額の年金をうけとることができます。
172 trimestresに達していない人が定年退職をすると、受給額が大幅に減額されます。
67歳を待って定年退職をする場合、減額のペナルティはありませんが、172 trimestesに達していない場合は、その分がProrata(比例分割)されます。
病気や育児休暇等で仕事を休み、trimestres分の保険料を納付できなかった場合でも、みなし納付期間として扱われ、172 trimestreに合算されます。
日本で働いてきた人は、その期間をフランスの納付期間に合算して、Validéすることができるので、1968年1月1日以降の生まれの人は64歳での定年退職も可能です。ただし、年金の受給額は減額されます。
第3回では、年金受給額の計算方法についてみていきましょう。