Période d’essai(試用期間)とDélai de prévenance(予告期間)の関係について考えよう~フランスで会社を辞めるとき

仕事を辞める
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意気揚々と新しい職場で働き始めたものの、

「職場の雰囲気が合わない…」

「仕事内容が面接で説明されてたものと違う」

「第一希望の会社から内定の通知が来た!」

等々、様々な理由で仕事を始めてすぐに離れる決心をすることがあるでしょう。

Période d’essai(試用期間)とは、労使双方が相手に理由を述べることなく、自由に契約を打ち切ることができる期間のことです。

ただし、自由に契約を解消することができる、といっても少しだけルールがあります。それが、Délai de prévenance(予告期間)です。

この記事では、Période d’essaiについて、そして辞める際のルールや、失業手当はもらえるのかどうかについて、詳しく解説していきます。

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Période d’essaiは労使双方にとってのテスト期間

Période d’essai(試用期間)中は労使双方にとって、いわゆるテスト期間です。

従業員側はもちろんのこと、雇用主側も、この期間中に新しい社員の適正を見極めることになります。

試用期間での契約の解消は、労使双方とも、理由を明示せずに自由に契約を解消できるという点で重要な意味を持ちます。

試用期間をすぎて雇用主側が従業員を理由なく契約を解消しようとすれば、時間をかけて準備し、重大な解雇手当金を支払う必要があります。

従業員側も同様です。CDIであれば、試用期間が過ぎた後に会社を辞めるには、1ヶ月から3ヶ月かかります。

また、CDDは特別な理由を除き、契約を中断することは認められていません

よって、Période d’essaiの設定は義務ではないものの、ほとんど全ての会社でPériode d’essaiの期間を設置しています。

Période d’essaiの期間はどれくらい?

試用期間の長さは契約形態(CDIかCDDか)、役職(社員か、管理職か)によって違います。

また、CDIの場合、管理職は特に、Période d’essaiのRenouvellement(更新)を求められることがあります。(CDD契約にはRenouvellementは存在しません)

通常は契約書にPériode d’essaiの期間や更新の有無について書かれているので、よく確認しておきましょう。

なお、試用期間の数え方は、土日祝日を含めた、カレンダー通りの数え方です。

例えば2024年5月2日に入社して、試用期間が2ヶ月の場合、試用期間の最終日は2024年7月1日です。

CDIの場合

CDIの場合、労働法典で定められているPériode d’essaiの期間は以下の通りです。

試用期間更新の有無合計
Employé ou ouvrier(一般社員)最長2ヶ月4ヶ月
Agent de maitrise ou technicien(技術者)最長3ヶ月6ヶ月
Cadre(管理職)最長4ヶ月8ヶ月

Conventionによってはこれよりも短い期間で終わることもあります。

ただし、2023年9月以降、労働法典の内容よりも長い試用期間を定めることはできません。

CDDの場合

CDDの場合、CDIとは違い、契約期間によって試用期間が変わります。また、Renouvellement(更新)もありません。

CDD契約での試用期間の数え方は、1週間につき1日です

2週間のCDD契約の場合2日、4週間の場合4日となり、以下のように上限が定められています。

試用期間更新の有無
6ヶ月以下のCDD契約最長2週間X
6ヶ月以上のCDD契約最長1ヶ月X

Période d’essai中に契約を解消する場合~Délai de prévenance(告知期間)について

Période d’essai中に契約を解消する、つまり会社を辞める、となった際、

「明日から来ません」

「明日から来ないでください」

という風にはいきません。Période d’essai中は自由に契約を解消できるといっても、双方が守るべき予告期間、Délai de prévenanceがあります。

予告期間は、契約を解消するのが従業員側か、雇用主側かで違います。

また、働き始めてから何日が経過したかによっても違ってきます。

従業員側から契約を解消する場合

従業員側から契約の解消を申し出る場合、口頭のみでも問題ありません。

一方で言った、言わないの対立を避けるためにも、手紙(2部用意してお互いにサイン)もしくはメールでの告知が推奨されます。

CDI、CDDに関わらず、従業員側から申し出る際に遵守すべき予告期間は以下の通りです。

告知期間
8日以下の在籍24時間
8日以上の在籍48時間

例えば、契約開始日から5日目に、雇用主側に契約の解消を告げる際、当日の朝に告知してその日の労働を終えれば契約解消となります。
契約開始から10日が経っている場合、朝に告知したら、翌日の労働をもって契約解消となります。
シフト制等で翌日が休みの場合、その当日が最終日です。
同様に、土日休みの会社で金曜日の朝もしくは夜に契約解消の意思を告げた場合、金曜日が最終日です。

雇用主側から契約を解除する場合

一方、契約解消を告げるのが雇用主側の場合、Délai de prévenanceの実施はもう少し複雑です。

まずは、遵守すべき予告期間から見ていきましょう。契約形態による違いはありません。

告知期間
8日以下の在籍24時間
8日以上、1ヶ月の在籍48時間
1ヶ月以上、3ヶ月の在籍2週間
3ヶ月以上の在籍1ヶ月

従業員が1ヶ月を超えて働いている場合は、2週間前に契約の解消を告知する必要があり、3ヶ月であれば、1ヶ月前です。

この雇用主側の予告期間については、雇い主側自身、間違って覚えている人が沢山います。

試用期間中であれば自由に契約を終了できる、という言葉を勘違いして、「明日から来なくていいよ」といってしまうのです。

しかし、実際の流れは以下のようになります。

新入社員
新入社員

2024年5月2日入社、試用期間は5月2日から7月1日までの2ヶ月間。

試用期間中にDélai de prévenanceが終了する場合

この新入社員の試用期間は7月1日までです。

6月3日(月)に契約の解消を文章で通知した場合、守るべき期限はその当日、6月3日から16日の2週間です。つまり、労働契約は16日の夜をもって終了となります。6月3日に受け取る手紙、Rupture de la période d’essaiには通常、「手紙は翌日から効力を発揮し、Délai de prévenanceの2週間を守ったうえで、その最終日を6月16日に定める」等々のことが書いてあります。

試用期間を過ぎてDélai de prévenanceが終了する場合

同様のケースで、契約解消を告げるのがもっと後、6月24日(月)になったとしましょう。

Délai de prévenanceの2週間は6月24日から7月7日までです。

もちろん、試用期間の7月1日以前なので、Rupture de la période d’essaiを告げ契約解消をすることは可能です。ただし、7月1日を超えて働かせることは絶対にできません。この新入社員の最終日は7月1日です。

この場合、雇い主側は、7月2日から7月7日までの給料をIndémnité compensatriceとして支払う必要があります

以上のことは、本来雇い主側が注意すべき事柄なのですが、雇い主側が守らない、知らない、忘れていることが大変に多いです。
Délai de prévenanceの期間中は通常勤務する必要がありますが、試用期間を過ぎて働いてはいけません。また、Délai de prévenanceが試用期間を過ぎる場合は、必ず最後の給料明細にIndémnité compensatriceが支払われているのかを確認してください。

Période d’essai中に契約解消となったら、失業保険はもらえるのか?

Période d’essai中に契約の解消となった場合、失業保険を新たにもらう、継続してもらうことは可能でしょうか?

雇用主側からの契約解消の場合、Ouiです

ただし、失業保険の受給要件を満たしている必要があります(過去24ヶ月のうちに130日もしくは910時間働いている)。

自分からPériode d’essaiの中断を告げた場合、失業保険はもらえるのか?

では、自分からPériode d’essaiの中断を告げた場合にどうでしょうか?

基本的にはNonです。受給要件をみたしていても、失業保険受給の対象とはなりません。

ただし、いくつかの特例があります

特例1、前職を辞めて(辞職以外)、失業保険をもらっていない

例えば、CDD契約が終了し、失業保険を受給する間もなく新しい仕事を見つけたとしましょう。

しかし、その職場が合わず、貴方のほうから試用期間の中断を申し入れました。

この場合、新しい職場で3ヶ月以上働いていない、つまり、65日以下の労働日であることを条件に失業保険を申し出ることができます。(もちろん、受給要件そのものを満たしていることが条件です; 過去24ヶ月のうちに130日もしくは910時間の労働)

特例2、前職を辞めて失業保険の受給中に再就職した場合

同様の例ですが、失業保険をすでに給付していた場合です。

失業保険受給中に新しい職場をみつけたが、仕事内容が合わずに試用期間の中断を申し入れたとしましょう。

特例1の場合と同様に、再給付の条件は新しい職場で3ヶ月以上が経過していない、つまり65日以下の労働日もしくは455時間以下の合計労働時間であることです。

なお、3ヶ月を過ぎた場合で自分から契約の解消もしくは辞職を願い出た場合、失業保険の給付対象にはなりません121日の待期期間を経て、申請することになります

試用期間中に従業員側が契約の解消を申し出た際の、失業保険の受給の有無についてはFrance travailのサイトに詳しい解説があります。
https://www.unedic.org/l-assurance-chomage-et-vous/demandeur-d-emploi-ou-salarie/mes-droits-en-fonction-du-type-de-rupture-de-contrat/est-ce-que-j-ai-droit-aux-allocations-chomage-si-je-romps-mon-contrat-pendant-la-periode-d-essai#chapter_1

なぜ特例があるのか?と疑問に思うかもしれません。
これは、職業安定所France travail(旧Pôle emploi)の目的を考えてみると分かりやすいかもしれません。
職安の最大値の目的は、失業者の解消であり、失業保険受給率を下げることです。
失業者の再就職への心理的、金銭的なリスクを職安が一部負担することで、働く意力を後押ししているのです。(つまり、失業保険をもらって安穏とされるより、働きに出てくれるほうがいい、というわけです。)

Période d’essaiが自動的に延長になる場合

CDIの場合、Période d’essaiの期間に延長があると書きましたが、それ以外の理由でPériode d’essaiの期間が延びる場合があります。

例えば、病気の場合です。

新入社員
新入社員

2024年5月2日入社、試用期間は5月2日から7月1日までの2ヶ月間。

先ほどの新入社員。

彼が5月20日から2週間、病気で会社を休んだとしましょう。

この場合、試用期間は2週間延長され、7月15日までとなります。

7月1日を過ぎたから、試用期間を終えて正社員になった、と考えるのは間違いです。注意しましょう。

まとめ

フランスの会社では、試用期間中に契約を解消することは度々あることです。

理由は実に様々です。

会社側は、新しい従業員の業務遂行能力、生活態度、チームワークの有無等々を見て、業務に滞りがでそうだと判断すれば試用期間を中断します。

従業員側は、就職活動の時点で何社か応募していて、入社後に第一志望のところから内定がでた、といった理由が多いように思います。

双方ともに「あっさり」としているので、会社側から契約終了を告げられても落ち込むことはありません。経験を糧に次へ行きましょう。

また、職場に辞めると言い出しにくい、迷惑をかけるのではと心配することもありません。

自分の利益、自分のやりたいこと、自分の感覚に「合わない」と感じたら、我慢せずに、Période d’essai中に契約を解消しましょう。

判断が早ければ早いほど、結果的には双方にとってプラスとなります。

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