フランスで仕事をしたい人、仕事を探している人が履歴書の準備をする前に用意しなくてはいけないこと。
それは、日本でとった学位をフランスで認めてもらうことです。
この記事では、なぜ、どのように日本の学位をフランス語に変換するのかを紹介します。
フランスにおける仕事のカテゴリー
フランスの仕事のカテゴリーは大別してProfession non réglementéeとProfession réglementéeの二つがあります。
Profession réglementéeはその仕事を遂行するのに国からの承認が必要となる職業です。例えば、医師、弁護士、歯科医、建築士、機械技術工、美容師、消防士等々がそれにあたります。この仕事をするためには、国家試験を通過して職業免許を取得する必要があります。
Profession non réglementéeは資格の有無が第一条件ではない職業です。例えば、日本のメーカーで営業として働いていた、ホテルの受付業務をしていた、観光業界でマネジメントの仕事をしていた人がフランスで同じ職種に就くのに、資格があるかどうかは問題ではありません(個人事業主として独立して働く場合は別として)。
雇い主がOKを出せば、フランスで関連の資格を持たずに働くことができます。
ただし、当然のことながら、フランスで貴方の経歴を公式に証明するものを何も持たず、「経験」だけを履歴書にアピールして雇ってもらうのは大変に難しいです。
希望の職種がProfession réglementéeに当たるかどうか、以下のサイトで調べることができます。
このサイトに登録されている職業は、Profession réglementée、つまりフランスの国家試験を通過した後に就くことができる職業です。
https://www.inpi.fr/annuaire-activites-professions-reglementees
なぜ日本の学位をフランスで承認してもらう必要があるのか?
日本からフランスに来る人の場合の多くは、日本で高校、大学、専門学校、大学院等々を終えて社会人として仕事をしていた人や大学卒業の後にフランスへ留学してくる人がほとんどでしょう。
つまり、日本で一定の義務教育、高等教育を終えて、社会生活を送るために十分な知識と一定の専門知識をもっています。
しかし、フランスでは、それを証明するものは何もありません。
フランスで暮らす皆さんもご存じのように、フランスはDiplôme(学位、資格)がモノをいう社会です。フランスで証明できるDiplômeが何もない状態で就職活動を行えば、せっかくのチャンスを逃すことになるかもしれません。
フランスの国外で取得した卒業証明、学位をフランス国内のそれと互換性を証明してくれる公的機関があるので、できれば就職活動を始める前にそこに依頼しましょう。
日本の学位を変換する方法
フランス国外で取得した学位をフランスで認めてもらうためには、 Centre Enic-Naricという機関に申請する必要があります。
Centre Enic-Naricのサイト
https://www.france-education-international.fr/article/comment-demander-une-attestation
手続き費用
2024年12月現在の手続き費用は90€です。
必要書類
申請に際しては以下の書類が必要となります。日本への一時帰国の際などに現地で取得できるように予め確認しておきましょう。
- 身分証明書
- 最終学歴証明書(学位、卒業証明書等、取得先の言語で書かれた原本のコピー)
- 在学証明書、成績証明書等、在籍期間を証明するもの(取得先の言語で書かれた原本のコピー)
- 2と3の法定翻訳家によるフランス語訳(英語バージョンのものがあればフランス語訳は必要なし)
2と3の書類は最終学歴のみで構いません。高校卒業が最終学歴の人は高校の、大学、大学院が最終学歴の人は大学の学歴および在学証明書を提出します。
取得方法は学校によって、郵送、窓口、ネット申し込み等々様々です。学校のHPに取得方法の案内が記載されています。
2と3は日本語の原本のコピーを提出しますが、さらにフランス語の法定翻訳を付ける必要があります。ただし、英語で書かれたものがあれば、フランス語訳は必要ではありません。
多くの大学機関では英文での証明書発行にも対応しています。よってCentre Enic-Naricに日本語の原本のコピーと英文のコピーを提出すればOKです。
受け取りまでの期間
Centre Enic-NaricのHPでは、証明書の発行までに4ヶ月から6ヶ月の期間を見込んでいます。
時間に余裕をもって申し込みを行いましょう。
受け取った後
一度受け取った証明書は生涯利用できます。更新等の必要はありません。
証明書にあなたの学歴がフランスでいうどのレベルに相応するのかが書いています。
履歴書を作成する際に、この情報をあなたの学歴の欄の隣に書き込んでおきましょう。求人に応募する際には、証明書のコピーも忘れずに。
Centre Enic-Naricで証明できるもの、できないもの
Centre Enic-Naricはフランス国外でのアカデミックな経歴をフランスの教育制度に照らし合わせて証明してくれるもので、職歴はその管轄外です。貴方が日本の会社で、専門資格を持って職務についていたことを証明することはできません。
ただし、ある一定の条件下で限られた職種に関しては、フランスの労働市場との互換性のある証明書を発行してくれる場合があります。
これについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
日本の学歴をフランスで承認してもらう作業は、フランスに来たらすぐに開始しましょう。
フランスで勉強をする際にはもちろん、仕事をする際にも必ず必要になってきます。Profession non réglementéeの職種でも、会社によっては、基本給が最終学歴のレベルで決まるところもあります。
また、フランスで資格を取るためにFormation(研修)を受ける際にも、この証明書が必要となることがあります。というのも、例えばFormationのレベルがNiveau 6の場合、貴方がすでにNiveau 5相応の学術レベルを保持していることを申し込みの時点で証明しなくてはならないからです。
証明書の発行は90€と決して高くはない金額です。使う、使わないに関わらず、フランスで仕事をしたいと考えている人は手続きをしておくことをおススメします。