フランスのSMIC(法定最低賃金)について知ろう

基礎知識
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フランスの法定最低賃金をSMICと呼びます。
SMICの改定は2020年以前はほぼ年に1回、1月1日に行われていましたが、近年のインフレ率の上昇を受けて、2021年以降、年度内にも何度か最低賃金が更新されています。

2024年11月1日に行われるSMIC改定は2025年1月1日の改定を「前倒し」するものとなります。
この機会に、SMICについて詳しく掘り下げてみましょう。

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SMICについて

日本の最低賃金は地域別ですが、フランスでは全国統一です。よってパリで働こうと田舎で働こうと、最低賃金は両地域同一です
また、未成年者等の一部例外を除いて、全ての労働者は最低賃金での労働が保障されています。

現在の最低労働賃金(2024年10月現在)

2024年11月1日以降、SMICは以下のように改定されます。

2024年10月現在Brut(額面)Net(手取り)2024年11月1日Brut(額面)Net(手取り)
最低時間給11,65 €9,23 €最低時間給11,88 9,41
最低月給(151,67時間)1766,92 €1398,70 €最低月給(151,67時間)1801,841426,67

SMICはどうやって決まる?

SMICは以下の3つの状況下において見直されます。

  1. 一般世帯の物価上昇率を参考に1月1日に改定される
  2. 消費者物価指数が前回の改定より上昇した場合(2%以上)、年度内においてその上昇分が上乗せされる
  3. 政府はその裁量において時期を問わずにSMICを引き上げることができる

冒頭で書いたように、2020年まではSMICの上昇はほぼ1年に1回でしたが、2021年以降はインフレ率の上昇を受けて、年度内での改定が行われています。

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SMICを超えてる?超えてない?SMICと基本給について

毎月の給料を構成する手当、ボーナス等には基本給に含まれるものと含まれないものがあります。

詳しくは基本給の記事でも解説しているので、興味のある人はあわせて読んでみてください。

基本給がSMICより上か下か

毎月の基本給(Salaire de base)がイコール月の給料である人は珍しいでしょう。
実際の給料明細は、基本給のほかに時間外手当、連続勤務手当、休日手当、深夜手当、危険物取扱手当、特別ボーナス、 年度ボーナス等々、様々な要素が付け加えられます。

こうした様々な手当のなかで、「基本給」とみなされるのは、Salaire de base(基本給)、Avantages en nature(現物給与)、Primes liées à la productivité(成果報酬)の3つです。

また、その職種に付属する手当も「基本給」として扱われます

例えば、医療福祉関係で働く人には基本給のほかに国から支給されるボーナス、Prime SEGURの238€が付きます。この場合、Prime SEGURの238€は基本給を構成するものとして扱われ、Salaire de base + Prime SEGURの合計がSMICを下回るかどうかが焦点となります。

SMICを下回る給料がありえる!?

雇い主側はSMICを下回る賃金を支払うことはできません。
一方で、「結果的に」時間給がSMIC以下になることが、CDD契約の場合起こり得ます。

フランスでのフルタイムの場合の法定労働時間は151,67時間です。

これは、1年の労働時間を月単位に平均化したものになります。(詳しい計算方法については以下の記事を参考にしてください)

会社員は通常、月給制です。フランスで働く皆さんも、一部の職種を除いて毎月、同じ金額の基本給をもらっていると思います。
2月は3月より労働日数が少ないからといって基本給が減らされることはありません
なぜなら、上述のように、通常は1年の総労働時間を12分割して平均化しているからです。

ただし、例外があります。超短期契約のCDDの場合です

特殊な超短期契約のCDDの時間給

超短期契約とは、1日以上1ヶ月以下のCDD契約を指します。
月の途中で入社、退社する場合、会社側は実質労働時間で給料を支払うことができます。

フルタイム労働の場合、月の平均労働時間は151,67時間、週35時間、1日7時間です。
実質労働時間とは、日曜と土曜日を除いた月のJours ouvrésの日数×7時間=月の実質的な労働時間を算出する方法です。
例えば2024年10月は、日曜と土曜日を除いた平日の数は23日です。
よって、10月の実質労働時間は23日×7時間=161時間となります。

1801,84€(11月1日以降のSMIC) ÷ 151,67時間 =11,88 € / SMIC時間給となりますが、例えば10月に一日だけ働いた人の時給は、1801,84€÷161時間11,19 €となり、SMICを下回ることになります

この計算方法自体は労働法と判例に則っているので、全く正しいのですが、確かに分かりにくいですね。また会社によっては全く違う計算方法を用いているところもあります。
例年、短期CDD契約の人から「計算が間違っている!SMICを下回るなんてありえない!」という連絡がくるもの当然かと思います。

まとめ

SMICが改定されると度々話題になるのが、「SMIC改定に合わせて私の基本給も上昇するの?」です。

答えはOuiとNonの両方です。

雇用主側は、従業員がすでにSMICを上回る給料をもらっている場合、会社内協定で定めがある場合を除いて、全体の給料体系を見直す義務はありません。

ただし、SMIC上昇に付随して各業界団体のConvention collectiveが改定されて全体の賃金体系が底上げされることはあります。

自分の基本給を上げるために一番有効で手っ取り早い手段は、雇用主もしくは上司への直談判です。
11月の上昇率に合わせて、2%の基本給の見直しをもちかけてみてもいいと思います。
SMICの改定は交渉をもちかける絶好の機会なので、ぜひ活用しましょう。

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