PTP(Projet de transition professionnelle)について知ろう~給料を受け取りながら学校に通う~

転職・研修
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中堅社員
中堅社員

ねえ、ちょっと聞いてよ。俺、仕事辞めようと思ってて…

先輩社員
先輩社員

え、そうなの?なんでまた急に…

中堅社員
中堅社員

システムエンジニアとして3年働いてきたんだけどさ、やっぱり俺、パティシエになる夢が捨てられないんだよ…だから、パティシエの学校行こうかとおもってさ。

先輩社員
先輩社員

だったら、会社やめなくてもいいんじゃない?会社に在籍して、給料もらいつつ、パティシエの学校に行けばいいじゃん!

中堅社員
中堅社員

えっ、そんな都合のいい話ある?

あります。
というわけで、今回はPTP(Projet de transition professionnelle)の制度について解説していきます。

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PTP(Projet de transition professionnelle)って何?

PTP(Projet de transition professionnelle)とは、今現在働いている人が、今のポストとは違う職種のFormation(研修、職業訓練)を受けるために会社を休むことを可能にする制度です。

条件を満たせば、CDIはもちろん、CDD契約の人も制度を利用することができます。

対象となる研修は今自分が付いているポストと何も関係がなくてもかまいません

上の例のように、システムエンジニアからパティシエへ、スーパーのレジ係から秘書へ、何を目指すかは本人の自由です。

研修の期間、当事者は仕事の一部をもしくは全面的に休んで、学校に通うことができます。

会社を休んでいる間の給料は100%から60%の間で補償され、研修終了後には元のポストに戻ることができるます。

一連の流れとしては、以下の通りです。

  1. 応募条件を確認する
  2. 希望する職種の職業訓練を行っている学校に連絡をとり、日程と費用を確認する
  3. PTPの休暇申請を雇用主に出す
  4. 地域別労使委員会にPTPの計画を提出して承認をうける
  5. 3と4が揃った場合、会社を休んで学校に通い、職業訓練をうける。その間の給料は委員会が支払う
  6. 職業訓練が終了した後、会社に戻る。基本的には休暇前のポストに戻るが、職業訓練に応じて配置転換を求めることもできる。

PTPを利用するためには?

PTPを利用するためには、以下の条件を満たしている必要があります。

CDIで働いている場合

Formationを開始する時点において、最低でも2年間の就業経験があり、そのうちの少なくとも1年は同じ会社で働いていることが最低条件です。

総合して2年なので、例えば1社目を1年半で辞めた後、2社目が6ヶ月を過ぎていれば申し込む権利があります。2年間同じ会社にいる必要はないです。また、契約の形態を問わないので、CDDの期間も含めることができます。

CDDで働いている場合

Formationを開始する時点から遡って5年の間に総合して2年間の就業経験があり、さらに直近12ヶ月の間に4ヶ月以上CDDとして働いていることが条件です。

なお、CDD契約にはContrat d’apprentissageやContrat de professionnalisationは含めません。

どうやってPTPを申し込めばいいの?

申し込みの際には、以下の2つの手続きを行う必要があります。

まず、自身の転職計画をCommission paritaire interprofessionnelle régionale compétente(地域別労使委員会)に提出して、承認されること、そして、雇用主に休暇を願い出て許可を得ることです。
順番にみていきましょう。

委員会への計画提出

PTPの制度を資金面で援助するのがCommission paritaire interprofessionnelle régionale compétente(地域別労使委員会)です。

委員会は各地域ごとにわかれています。自分の居住地もしくは会社の所在地の委員会のサイトに登録しましょう。
https://travail-emploi.gouv.fr/formation-professionnelle/acteurs-cadre-et-qualite-de-la-formation-professionnelle/cpir

学校が決まったら、カリキュラム内容、期間、費用、キャリアチェンジの展望などを含めた計画書を委員会に提出します。

委員会が審査を行い、計画が承認された場合、以下の支援を受けることができます。

  • CPF(職業訓練用の個人口座)を利用した後の差額の授業料の負担
  • 職業訓練に伴う交通費、宿泊費等の負担
  • 休業期間中の給料の補償(上限あり)

CPFについては、以下の記事に詳しく書いてます。

雇用主への休暇の申請

雇用主へ申請する

会社を休んで職業訓練を受ける場合、雇用主に休暇の申し出を行います。

配達証明付きで、以下の情報を含めた手紙を送付します。(手紙の書き方についてはインターネット上に沢山の例文がでているので、参考にしてください)

  • 学校の開始日と終了日および試験の日程
  • 職業訓練の名称(Intitulé de la formation)
  • 職業訓練の期間
  • 職業訓練を実施する教育機関の名前
  • 目指す資格の名前とその試験日
休業期間が6カ月以下の場合

休業期間が6カ月以下の場合、休暇の申し出は開始日から60日以上前に行います。

休業期間が6カ月以上の場合

休業期間が6カ月以上の場合、休暇の申し出は開始日から120日以上前に行う必要があります。

雇用主からの回答が届く

雇用主は基本的に従業員からの申請を断わることはできません。ただし、以下の理由に基づき、9カ月を限度に延期を決定することができます。

  • すでにPTPの制度を利用して休暇を取得している従業員がいる
  • 従業員の不在が会社の運営に重大な影響を及ぼす

もし、休暇申請から30日以内に雇用主が書面で回答しなかった場合、申請は許可されたものとみなされます

委員会からの計画承認を待ってから雇用主側に休暇を申請するべきか、雇用主の許可を得てから委員会に計画を提出するか、どちらを先に行えばいいのか悩ましいと思います。
委員会の予算には限りがあるので、当然ながら全ての計画が承認され、財政的支援を受けられるわけではありません。また、雇用主側から延期を要請され、Formationを始めることができないことも考えられます。
基本的な流れとして、まず雇用主側に許可を願いでてから、委員会へ計画を提出するのが推奨されています。ただ、実際には多くの人がほぼ同時進行もしくは先に委員会への審査を優先させているようですが…。
委員会の審査にはある程度の時間がかかるので、学校の授業開始時期に間に合うように、余裕をもって申請しましょう。

職業訓練の期間の給料について

職業訓練で会社を休んでいる間の給料を補償してくれるのが、計画を承認したCommission paritaire interprofessionnelle régionale compétente(地域別労使委員会)です。

職業訓練が始まる前月の過去12ヶ月の基本給の平均を参考給料とします。CDD契約の場合は直近の4ヶ月の平均が参考給料として扱われます。

参考給料がSMIC(最低賃金)X2を下回る場合

参考給料がSMICの2倍を下回る場合(2024年9月現在、3 533,84 €)、100%が支払われます

参考給料がSMIC(最低賃金)X2を上回る場合

参考給料がSMICの2倍を上回る場合、つまり3 533,84 €以上の場合、以下の通りです。

職業訓練の期間が1年以下…
参考給料の90%の支払い
職業訓練の期間が1年以上…
最初の1年は参考給料の90%、それ以降60%の支払い

給料の支払いは、雇い主が個人事業主の場合には、委員会が従業員側に直接支払います。それ以外は、会社側が普段の給料明細と同様に職業訓練中の従業員への支払いを行い、委員会が会社に肩代わり分を振り込みます。

職業訓練が終了したあとは…

会社の福利厚生上、職業訓練で仕事を休んでいる人も仕事をしているのと同様に扱われます。

よって、従業員は有給休暇の獲得はもちろん、継続して会社のMutuelleに加入することもできますし、病気、労災に際しての各種の公的扶助も受けられます。

職業訓練終了後、従業員は自分が元いたポストに戻り仕事を再開します。

RHとの面談を経て、獲得した資格に対応するポストへの配置転換を求めることもできます。

もう一度職業訓練の学校に通うことはできる?

職業人生を通じて、数回の職業訓練を行うことは可能です。

ただし、計画書が委員会に承認される必要があり、当然のことながら1回目よりもハードルは高くなります。

また、PTP休暇を取得するためには待期期間を満たす必要があります。

同一の会社に再度、PTP休暇を申請する際には、6ヶ月以上、6年以下の待期期間が必要です。

まとめ

PTPはキャリアアップではなく、キャリアチェンジを目的とした制度です。

よって、職業訓練を経て試験に合格し、資格を手にした多くの人は新しい職場を求めて転職活動を始めることが多いです。一方で資格を手にしたけど、同じ会社、同じポストに残る人も多いです。

ある程度の経験を積んでいると、新しい職種でゼロからスタートするのは給料の面からいってもなかなか難しいようです。

本文にも書いたように、PTPのための休暇申請を雇用主側は延期することはできても、拒否はできません。
しかし、特に小さい会社だとありとあらゆる手段を使って当該社員が休暇を取得しないように、所謂「いやがらせ」を行ってきます。

計画は承認されたけど、休暇が取得できなかった、または職業訓練を受けた後に会社から冷遇された等々、フランス人からもよく聞く話です。

PTPの制度を利用する際には、計画を入念に検討することはもちろんのこと、上司に対する根回し、万一いやがらせにあった際の相談機関等々、下準備を怠らずにしましょう。

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