フランスでは、あらゆる職業に資格が定められています。
医師や看護師、建築士などの職業に就くために資格が必要なのは不思議ではないかもしれませんが、実はレストランのウェイター、販売員、ホテルの受付、銀行の行員、不動産の窓口、すべての仕事には国および関係機関の承認を受けた「資格」があります。
この記事では数あるフランスの資格の内容について、分かりやすくまとめてみました。
Diplômeとは?
Diplômeとは日本でいうところの学位と資格の二つの意味があります。Diplômeは主にその人の教育課程を証明するもので、通常は長期間の学習を経て、その最後に授与されます。日本の履歴書だと、学歴に当たる部分を構成するものです。
国の認証を受けた資格は、RNCP(職業資格認定国家委員会)に登録されます。
RNCPのサイトで、登録されている資格の検索ができます。
https://www.francecompetences.fr/recherche-resultats
Diplômeの種類とレベル
Diplômeは学習達成度の水準に合わせて、以下のようにレベル分けがなされています。
レベルが上がるごとに専門性が高まり、管理職には、レベル6から8、日本でいうところの修士から博士相当のDiplômeを求められる場合が多いです。
CAP (職業適性証書)
高校2年修了レベル。職業高校で取得できる最初の資格。2024年現在、200種類の資格が存在し、パン職人、お菓子職人、レジ、販売員、美容師、写真、時計製造、石工、配管工などの資格がある。
職業高校以外でも、職業学校や見習い訓練センター等でも資格を取得できる。
BEP(職業教育修了証書)
高校2年修了レベル。3年目に取得できる職業バカロレアへの途中で与えられる修了証書で、BEP自体を目指すものではない。
Baccalauréat(高校卒業証書)
普通科、技術科、職業科の3種類に分かれている。それぞれの教育課程3年を修了し、バカロレア試験に合格すると取得できる。
BP(職業免状)
Brevet professionnelはすでに職務経験がある人、就業中の人の昇進を目指す資格。よって受験するためには職務経験が必要。
DEUG / DUT / DEUST
大学および短期大学の2年過程修了時に授与されるDiplôme。
DEUGは大学一般過程2年次修了証書、DUTは技術大学2年次修了証書、DEUSTは科学技術短期大学2年免状。
BTS(上級技術者免状)
バカロレア取得後、リセに設置されている上級技術者コースの2年過程を修了し、テストを合格した後に取得できる。少なくとも1回のStage(企業内研修)が必須。
Licence / Licence professionnelle(学士、職業学士)
Licenceは学士課程3年修了時に、Licence professionnelleは1年から3年の課程修了時に授与されるDiplôme。
BUT(技術大学修了証書)
技術大学3年過程修了時に授与されるDiplôme。
Master / Doctorat
日本でいう修士課程、博士課程に相当する過程を修了した人に授与される。
その他のDiplôme
Diplôme d’Etat ( DE )
Diplôme d’Etatは高等教育省から授与される国家認定資格のことで、いくつかの職種を遂行するためには、Diplôme d’Etat ( DE )が必須です。例えば、医師、看護師、助産師といった医療関係の職業や教師、スキーの指導員等の教育関係、音楽、舞台、サーカス等の舞台芸術等々です。
弁護士、公証人、公認会計士等の仕事も同様にその職務を遂行するためには定められた教育課程を修了し、試験に合格する必要がありますが、資格を承認するのは「国」ではなくその職業の関連機関です。よって、正確には弁護士等の資格はDiplôme d’Etatではありません。
Diplôme d’Université( DU )
Diplôme d’université(DU)は各大学が発行する課程修了証明書で、大学独自の学位です。
証明書を発行する大学により体裁は様々ですが、Diplôme nationalとは異なり、国の認証を受けていません。
Titre professionnel ( TP )とは?
Titre professionnel、略してTPとは労働省が認定する職業資格です。専門性を絞ることで資格取得へのプロセスを短縮し、就職や転職へのアクセスを容易にします。通常はCentre formation(職業研修センター)でForamtion(研修)を受け、テストに合格した後に発行されます。
TPはサービス業、建設業、工業等あらゆる職業セクターに存在し、その内容によってDîplomeに対応するレベル分けがされています。
私の仕事、Gestionnaire de paieはTitre professionnelです。
ひと昔前は、Gestionnaire de paieという資格は存在せず、会計や人事で働く人がその職務を担当していました。しかし、給料明細やその関連業務がどんどんと複雑になっていくなか、給料明細のみを専門にする人の養成が必要となり、その結果生まれたのがGestionnaire de paieという資格です。
よって、職場の同僚は、私のようにGPの資格を取って就職した人か、大学で会計や人事を学んで、その流れで給料課に来た人のどちらかです。
TPを取得するためには職業学校に通って、試験に合格する必要があります。Gestionnaire de paieの資格の場合全体の学習期間としては8ヶ月から1年半です。
大学に通い直すよりも短期間で修了できる点、いくつかのFormationは国もしくは県から援助が出て学費を負担せずに通える点、失業保険を同時に受給できる点などから、失業者および転職希望者が受講する場合が多いです。
Certificat de Qualification Professionnelle (CQP)とは?
CQPとは職業資格認定証のことで、各産業の労使間で策定された職業資格です。
資格をまとめる中心組織が存在せず、各産業ごとに資格を作成、認定しているので、重複しているものや全く知られていない資格等々があります。2016年の調査では150の産業に1200の資格が策定されそのうち353の資格は内容が重複しているものでした。
よって、CQPは同一産業内であれば通用するものですが、産業をまたぐ場合には限定的なものになります。
TPと同様に、主にFormationを受講した後に取得することができます。
まとめ
Diplômeが時間をかけて広範囲な学習内容を含んでいるのに対して、Titre professionnelとCertificat de Qualification Professionnelleはすでに職業世界に足を踏み入れた人が、なるべく短期間で転職、キャリアアップを目指せるように、的を絞っています。
Titre professionnelの場合、上記のようにDiplômeと互換性があり、職業研修センターの学習要項には、研修後にTPが取れるかどうかの記載があります。
Diplômeは高校生から大学生のあいだに取得する資格、学位です。それでは、私たちのように日本で義務教育を終えて、もしくは大学、大学院をでて渡仏し、フランスでCPを取って仕事をしたい場合、フランスの高校からやり直す必要があるのでしょうか?
そんなことはありません。
学校を出て、社会人になってから学び直しをする場合は別の道が用意されています。
その話については、また別の記事でしたいとおもいます。